一期一振

一期一振（いちごひとふり）

一期一振は、鎌倉時代の中期に製作された日本の刀で、その価値は非常に高く、多くの人々に尊敬されています。この刀は宮内庁により管理される御物であり、特に「享保名物帳」にその名が記載されていることからも、その重要性が伺えます。

概要

この刀の製作者は粟田口吉光です。彼は鎌倉時代中期の著名な刀工であり、彼の刀は正宗や郷義弘とともに名品として長らく珍重されてきました。吉光は主に短刀を製作していたが、一期一振は彼の唯一の太刀とされています。そのため、細川幽斎がこの刀に「一期一振」という名前を付けたと言われています。一振は「一生のうちにおいての傑作」という意味を持っています。

この刀の伝来に関しては、いくつかの説があります。一つは越前の朝倉家からの伝来、別の説は堺から本阿弥祐徳が購入した刀を豊臣秀吉が取り上げたというもの、さらには1590年に毛利家から献上されたとする説です。研究者の福永酔剣によれば、『豊臣家御腰物帳』には、この刀が名刀の筆頭に位置づけられていることが記されています。具体的には「一之箱」に収められ、他の名刀とともに扱われていました。特に目貫や笄は後藤祐乗によって制作されたものに交換されています。

戦国時代の大坂夏の陣では、大坂城が落城し、その際にこの刀も焼失しました。その後、初代越前康継によって再刃され、その際に長さが2尺28寸から2尺22寸に短く磨り上げられたことが『享保名物帳』に記されています。再刃作業は大坂城の落城後、京都から康継が呼ばれて行われました。その後、名古屋城に保存されたため、記録には将軍家や尾張家の所有物としての記載が見られます。

幕末には、1863年に尾張藩主の徳川茂徳によって孝明天皇に献上され、以降は天皇の御物として扱われるようになりました。多くの御由緒物の刀剣と同様に、宮中の儀式などで利用されています。特に、毎年10月17日に行われる神嘗祭の際には相州行光の太刀とともに使用されることが決まっており、非常に重要な役割を果たしています。上皇明仁が相続した際には、相続税法に基づく非課税財産として扱われました。

作風

一期一振の刀身は68.78センチメートルの刃長を持ち、反りは2.58センチメートルです。元幅と先幅はそれぞれ3.18センチメートルと2.36センチメートル、元重と先重はそれぞれ0.76センチメートルと0.67センチメートルとなっています。また、茎長は17.27センチメートルで、切先長は3.48センチメートルです。この刀の造りは鎬造であり、棟は庵棟、切先は猪首切先という特徴を持つことが知られています。

鍛えは小板目が美しく、刃文には直刃や互の目が交じり合い、独特な美しさを醸し出しています。茎は大磨上げられ、目釘穴は一つ存在し、その下には吉光の銘が刻まれています。

同名の日本刀

また、一期一振という名前は、江戸時代末期に源清麿によって作成された刀についても言及される場合があります。

まとめ

一期一振は、日本の刀剣の歴史において非常に貴重な存在であり、その制作過程や伝来の歴史、さらには現代における役割まで多岐にわたる興味深い側面を持っています。古の武士たちの象徴ともいえるこの刀は、今なお多くの人々に称賛され、受け継がれるべき文化の一部と言えるでしょう。

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