後藤祐乗

後藤祐乗とは

後藤祐乗（ごとう ゆうじょう）は、室町時代に活躍した金工家であり、装剣金工の名門、後藤四郎兵衛家の始祖として知られています。永享12年（1440年）に生まれ、永正9年（1512年）に73歳で亡くなりました。本名は正奥、幼名は経光丸、通称は四郎兵衛といい、出家してからは祐乗と号しました。

生涯

美濃国（現在の岐阜県南部）の出身で、藤原利仁の子孫である後藤基綱の子として生まれました。当初は足利義政の側近として軍事に従事していましたが、18歳の時、同僚の讒言により投獄されます。しかし、獄中で小刀と桃の木を使い、神輿船14艘と猿63匹を彫り上げたところ、その卓越した技術が義政の目に留まり、赦免されただけでなく、装剣金工を専門とするように命じられました。また、足利家から近江国坂本に300町の領地を与えられ、後花園天皇からは従五位下・右衛門尉の位を授けられたと伝えられています。

作品の特徴

現存する祐乗の作品には、自らの銘が入ったものはほとんどなく、無銘または後世の鑑定によるものが多く見られます。作風としては、小柄（こづか）、笄（こうがい）、目貫（めぬき）といった刀装具が中心で、金や赤銅などの良質な素材を使用し、龍や獅子などの文様を、絵師である狩野元信の下絵をもとに、魚々子地（ななこじ）に高肉彫で表現することが特徴です。祐乗の彫刻技術は、刀装具という限られた規格の中で、細部にまでこだわった緻密な文様を施し、装飾効果を高めるというものでした。

後世への影響

祐乗の技術と作風は、後藤家が代々受け継ぎ、江戸時代の金工にも大きな影響を与えました。後藤家は17代にわたり、大判座や分銅座として活躍し、その技術は日本の金工史において重要な位置を占めています。また、後藤家では代々「乗」の字を通字として用いました。

代表作

祐乗の代表作として、「獅子牡丹造小さ刀拵」（前田育徳会蔵、重要文化財）が挙げられます。この作品は、彼の精緻な技術と芸術性を今に伝える貴重な文化財です。

後藤祐乗は、その卓越した技術と芸術性により、日本の金工史に名を残す名工であり、その作品は今もなお多くの人々を魅了し続けています。

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