一色範氏

一色範氏：激動の時代を駆け抜けた武将

一色範氏は、鎌倉時代末期から南北朝時代にかけて活躍した武将で、足利氏に仕えました。一色氏の三代目当主として、激動の時代を生き抜いた人物です。

足利尊氏に従い、九州へ

建武の新政から離反した足利尊氏に従い、九州に下向しました。1336年の多々良浜の戦いでは、南朝方の菊池武敏らを破る功績をあげ、九州の守りとして、仁木義長や小俣氏連といった足利一門とともに残されました。

初代九州探題としての苦悩

義長が上洛した後、範氏は初代の九州探題に任命され、大友氏、少弐氏、菊池氏、島津氏ら、現地の有力守護たちとの対立を抱えながら、地域支配に尽力しました。彼は、武勇に優れた小俣氏義を探題府の侍所に任命し、九州制圧を試みましたが、その道のりは困難を極めました。

小俣氏義の嫡男である小俣氏蓮を島原半島内陸部や諫早湾沿岸に派遣し、南朝軍となった国人たちと戦わせましたが、九州探題としての権力基盤は脆弱でした。肥前国・筑前国の守護職には一時的に任命されたものの、現地の国人を被官化することはできず、1338年には幕府に窮状を訴える目安状を送るほどでした。

雨乞い祈祷と父子での九州経営

1342年、範氏は雷神宮に雨乞い祈祷を催促する文書を送っています。1346年には、長男の直氏が九州探題となり、父子で九州の地盤固めを進めましたが、九州の武士たちを味方につけることはできませんでした。観応の擾乱では尊氏派に属しましたが、状況は好転しませんでした。

九州からの撤退と晩年

少弐頼尚と結んだ足利直冬勢との戦いや、南朝の征西大将軍である懐良親王、そしてそれを支える菊池武光らとの戦いが続き、1353年には筑前国針摺原で菊池勢に大敗を喫しました。その後も敗戦が重なり、1355年には南朝勢の侵攻により博多を放棄し、長門国へと逃れ、そのまま帰京して隠退しました。1369年2月18日に死去しました。

次男・範光の活躍と一色氏の繁栄

範氏は九州での任務に失敗しましたが、次男の範光は室町幕府からの信任を得て、三河国・若狭国の守護、そして侍所所司に任命されました。彼は、守護大名・四職として幕府の政務に携わり、一色氏の繁栄の元を築いたのです。範氏自身は九州での成功を収められなかったものの、彼の血筋は後の時代に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

一色範氏は、激動の時代を力強く生き抜いた武将であり、その生涯は、南北朝時代の複雑な政治情勢と、武士たちの興亡を映し出す鏡と言えるでしょう。

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