九州探題

九州探題とは

九州探題は、室町幕府が九州地方を統括するために設けた軍事的な出先機関です。初期には鎮西管領とも呼ばれていました。鎌倉時代に存在した鎮西探題を前身とし、室町幕府が京都に拠点を置いたため、鎌倉府が関東を、奥州探題が東北地方を統治する中で、九州探題は九州の統治と李氏朝鮮との外交を担いました。

成立の経緯

九州探題の起源は、足利尊氏が後醍醐天皇の建武の新政から離反し、京都を追われた際に、九州へ逃れたことに始まります。尊氏は少弐氏と共に多々良浜の戦いで宮方（後の南朝）の菊池氏らを破り、その後、東上する際に一色範氏を大宰府に残したことが、九州探題の始まりとされています。しかし、九州では島津氏や大友氏などが従わず、少弐氏とも対立するなど、その支配は安定しませんでした。また、後醍醐天皇の皇子である懐良親王が菊池氏に迎えられ、大宰府を奪還し、九州に南朝勢力を築いたことも、九州探題の不安定化に拍車をかけました。

黎明期と今川了俊の活躍

室町幕府の重臣である斯波高経の嫡男斯波氏経、そして渋川義行が九州探題に任じられた後、3代将軍足利義満の時代には、管領の細川頼之により今川貞世（了俊）が任命されました。了俊は南朝勢力の掃討と御家人の守護被官化に尽力し、朝鮮からの使者を迎え、倭寇討伐の要請を受け、幕府の日明貿易（勘合貿易）開始に関わるなど、その活動は多岐にわたりました。

渋川氏の世襲と衰退

康暦元年（1379年）の康暦の政変で、了俊を支援した頼之が失脚すると、九州で独自の勢力を持っていた了俊は解任され、後任には頼之の政敵であった斯波義将の女婿・渋川満頼が任命されました。満頼は肥前の綾部城を拠点として九州探題府を置き、以降、渋川氏が代々世襲しました。しかし、少弐氏との戦いで渋川氏は衰退し、中国地方の大内氏の支援なしには存続できない状況となりました。渋川義長が少弐氏に通じたため、天文3年（1534年）に大内氏によって討たれ、九州探題の衰退は決定的となりました。最終的に、天文24年（1555年）に最後の探題領であった筑前姪浜が大内氏に接収され、九州探題はその役割を事実上終えました。

戦国時代とその後

戦国時代にも、九州探題は形式的な幕府の役職として存在し、渋川氏滅亡後には大友宗麟などが任命されました。江戸時代になると、同様の役割を担う西国郡代が設置されました。

歴代九州探題

以下に、歴代の九州探題を列記します。

一色範氏（1336年 - 1346年）
一色直氏（1346年 - 1351年）
足利直冬（1351年 - 1352年?）北朝方（直義方）
一色直氏（1351年 - 1352年）南朝方（尊氏方）
一色直氏（1352年 - 1358年）北朝方（尊氏方）
足利直冬（1353年/1354年? - 1361年）南朝方（直冬方）
細川繁氏（1358年）北朝方（尊氏方）
斯波氏経（1361年 - 1365年）
渋川義行（1365年 - 1370年）
今川了俊（1370年 - 1395年）
渋川満頼（1396年 - 1419年）
渋川義俊（1419年 - 1428年）
渋川満直（1428年 - 1434年）
渋川教直（1434年 - 1479年）
渋川万寿丸（1479年 - 1487年）
渋川政教（1490年? - 1500年?）
渋川尹繁（1487年 - 1504年?）
渋川稙直（1504年? - 1533年）
渋川尭顕?（1533年? - 1534年?）
渋川義基（1534年? - 1554年?）大内方探題
渋川右衛門佐（1534年?- 1543年頃?）大友方探題
大友義鎮（1559年 - 1578年）

関連項目

鎮西府
鎮西探題
西国筋郡代
奥州探題

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