一酸化窒素合成酵素

一酸化窒素合成酵素（NOS）について

一酸化窒素合成酵素（NOS）は、一酸化窒素（NO）の合成を担う酵素であり、その重要な役割を果たしています。NOは、単純な化学構造を持ちながらも常温で気体の状態にあり、生体膜を自由に透過し、細胞内での情報伝達因子として機能します。これにより、NOはアポトーシスや血圧の調節など多岐にわたる生理的過程に関与しています。

NOSの分類

NOSは主に二つの型に分けられます。構成型NOS（cNOS）は、常時細胞内に存在し、神経型（nNOS）と血管内皮型（eNOS）に分類されます。一方、誘導型NOS（iNOS）は、炎症やストレスの影響を受けて誘導されます。さらに近年の研究では、ミトコンドリア内にもNOS（mtNOS）が存在することが示されています。

NOSの機能

NOSの主な機能は、アミノ酸のL-アルギニン（L-Arg）を基にL-シトルリン（L-Cit）とNOを生成することです。この反応にはカルモジュリンや還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸（NADPH）が補酵素として働きます。

1. 血管拡張作用

NOは細胞内の可溶性グアニル酸シクラーゼ（sGC）を活性化し、GTPから生成される環状グアノシン一リン酸（cGMP）がプロテインキナーゼGを活性化します。この作用により、平滑筋の収縮が抑制され、結果として血管が拡張します。これにより末梢血管の拡張が促進され、血圧が低下します。また、狭心症治療に用いられるニトログリセリンなどは、体内の亜酸化窒素を増すことでその効果を発揮します。

2. 血小板凝集抑制作用

NOは血管内皮細胞により生成され、血小板内のcGMP濃度を上昇させることで、血小板の凝集を抑制します。この作用は、アラキドン酸の代謝物であるトロンボキサンA2が持つ血小板凝集促進作用と拮抗します。

NOの合成反応

NOSによるNOの合成反応は、L-ArgからNOとL-Citを生成する酸化反応によって行われます。この過程では、中間代謝物としてNG-ヒドロキシ-L-アルギニン（NOHLA）が生成されます。具体的には、1モルのNOを生成するために2モルの酸素（O2）と1.5モルのNADPHが必要です。その反応式は次の通りです：

```
L-アルギニン + NADPH + H+ + O2 → NOHLA + NADP+ + H2O
NOHLA + 1/2 NADPH + 1/2 H+ + O2 → L-シトルリン + 1/2 NADP+ + NO + H2O
```

NOSの構造

nNOS、iNOS、eNOSの3種類は、カルモジュリン結合部位を含むカルシウム（Ca2+）結合タンパク質です。nNOSとeNOSはCa2+依存的にカルモジュリンと結合して活性化されますが、iNOSはCa2+に依存せず、リポポリサッカライド（LPS）などの炎症性刺激によって誘導されます。このように、各型のNOSは異なる活性化機構を持つため、それぞれ異なる生理的役割を果たします。

NOS阻害薬

NOSの活性を抑制するために使用される薬剤には、D-アルギニンやNG-モノメチル-L-アルギニン（L-NMMA）、NG-ニトロ-L-アルギニン（L-NNA）などがあります。これらの阻害薬は、臨床においてさまざまな効果を持つ可能性が研究されています。

参考文献

• - 今堀和友、山川民夫 編集 『生化学辞典 第4版』 東京化学同人 2007年
• - 田中 千賀子、加藤 隆一 編集 『NEW薬理学 第4版』 南江堂 2002年

さらに詳細については、関連する文献や資料を参照してください。

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