一銭硬貨

一銭硬貨の歴史と種類

一銭硬貨は、明治時代から昭和時代にかけて日本で発行された補助貨幣です。1円の100分の1の価値を持ち、様々な素材やデザインで製造されました。1953年の小額通貨整理法により、現在は法定通貨としての効力を持っていません。

発行された一銭硬貨の種類

発行された一銭硬貨は以下の7種類です。

1. 竜一銭銅貨
2. 稲一銭青銅貨
3. 桐一銭青銅貨
4. カラス一銭黄銅貨
5. カラス一銭アルミ貨
6. 富士一銭アルミ貨
7. 一銭錫貨

竜一銭銅貨

• - 品位: 銅98%、錫1%、亜鉛1%
• - 量目: 7.128g
• - 直径: 27.878mm
• - 図柄:

- 表面: 竜図（吽竜）、年号、「大日本」、「1SEN」
- 裏面: 「一錢」、菊花紋章、菊枝と桐枝、「以百枚換一圓」

• - 周囲: 平滑
• - 発行開始: 1873年（明治6年）

新貨条例に基づいて発行された最初の銅貨です。表面には元首の象徴である竜が描かれています。口を結んだ吽竜が採用されており、金貨・銀貨の阿竜とは異なります。裏面には「以百枚換一圓」と円との比率が刻まれています。明治6年から明治21年まで製造されましたが、明治11年、12年銘は存在しません。明治14年銘には「大四」と呼ばれる希少な手替わりが存在します。

稲一銭青銅貨

• - 品位: 銅95%、錫4%、亜鉛1%
• - 量目: 7.128g
• - 直径: 27.878mm
• - 図柄:

- 表面: 「一錢」、稲穂
- 裏面: 旭日、年号、「大日本」、「1SEN」

• - 周囲: 平滑
• - 発行開始: 1898年（明治31年）

貨幣法によって発行された貨幣です。材質が銅合金から青銅に変更され、表面の図案が竜から稲穂と旭日に変わりました。戦前発行の硬貨としては珍しく、表裏のデザインに菊花紋章がありません。明治31年から大正4年まで製造されましたが、現存数の少ない希少な年銘も存在します。

桐一銭青銅貨

• - 品位: 銅95%、錫4%、亜鉛1%
• - 量目: 3.75g
• - 直径: 23.03mm
• - 図柄:

- 表面: 菊、唐草、「一錢」
- 裏面: 桐、桜、「大日本」、年号

• - 周囲: 平滑
• - 発行開始: 1916年（大正5年）

貨幣法の改正により発行された硬貨です。青銅の地金価格が高騰したため、小型化されました。菊花紋章は10花弁の菊に変更され、アラビア数字とローマ字の額面表示が廃止されました。大正5年から昭和13年まで製造され、当時の国民に広く普及しました。

カラス一銭黄銅貨

• - 品位: 銅90%、亜鉛10%
• - 量目: 3.75g
• - 直径: 23.03mm
• - 図柄:

- 表面: 菊花紋章、桐紋、海波、縦書きの「一錢」
- 裏面: 八咫烏、桜、「大日本」、年号

• - 周囲: 平滑
• - 発行開始: 1938年（昭和13年）

日中戦争の影響で軍需物資確保のため、黄銅で製造されました。表面には菊花紋章と桐紋、裏面には八咫烏が描かれています。この素材は「トムバック黄銅」と呼ばれ、赤みが強いのが特徴です。

カラス一銭アルミ貨

• - 品位: 純アルミニウム
• - 量目: 0.9g
• - 直径: 17.5mm
• - 図柄:

- 表面: 菊花紋章、桐紋、海波、「一錢」
- 裏面: 八咫烏、桜、「大日本」、年号

• - 周囲: 平滑
• - 発行開始: 1938年（昭和13年）

銅不足のため、アルミニウムに変更されました。デザインはカラス一銭黄銅貨と同じです。昭和13年には3種類の一銭硬貨が発行された珍しい例です。昭和14年銘には「ル四」と呼ばれる希少なタイプが存在します。

富士一銭アルミ貨

• - 品位: 純アルミニウム
• - 量目: 0.65g→0.55g（昭和18年後期）
• - 直径: 16mm
• - 図柄:

- 表面: 菊花紋章、富士山、「一錢」
- 裏面: 「一」、「大日本」、年号

• - 周囲: 平滑
• - 発行開始: 1941年（昭和16年）

アルミニウムの節約のため量目を減らしました。太平洋戦争の激化により、昭和18年には更に量目が削減されました。額面の「一錢」が横書きになっているのが特徴です。

一銭錫貨

• - 品位: 錫50%、亜鉛50%
• - 量目: 1.3g
• - 直径: 15mm
• - 図柄:

- 表面: 菊花紋章、唐草、「一錢」
- 裏面: 「大日本」、年号

• - 周囲: 平滑
• - 発行開始: 1944年（昭和19年）

戦況悪化により、錫で製造されました。錫と亜鉛を等量含むため「一銭錫亜鉛貨」とも呼ばれます。終戦直後にも製造されましたが、GHQの指摘により発行されず鋳潰されました。

未発行の一銭硬貨

上記以外にも、試作や未発行に終わった一銭硬貨が多数存在します。これらの中には、デザインや素材が異なるもの、製造されなかったものがあります。

一銭硬貨の終焉

インフレーションにより価値を失ったため、1953年の小額通貨整理法により、一銭硬貨を含む銭単位の硬貨はすべて通用停止となりました。

一銭硬貨は、日本の貨幣史において、様々な変遷を遂げた興味深い存在です。素材、デザイン、発行背景など、その歴史をたどることで、当時の社会情勢を垣間見ることができます。

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