新貨条例

新貨条例の成立とその背景

新貨条例（旧字体：新貨󠄁條例）は、明治4年5月10日（1871年6月27日）に日本で施行された重要な貨幣法です。この条例により、日本は貨幣単位として「円」を正式に採用しました。

明治初心の貨幣制度の課題

明治維新の後、新政府は江戸時代の三貨制度を引き継ぎましたが、国家を中央集権化するためには各藩が発行する藩札や、金と銀の統一が必要でした。また、当時は貨幣の構造が複雑で、外国人にとって理解しづらいものでした。さらに、国内外の金銀比価の差から金が流出し、戊辰戦争による財政の逼迫も政府の大きな問題でした。こうした背景から不換紙幣が大量に発行された結果、政府の貨幣の信用が著しく低下しました。

新政府は、慶應4年（1868年）に貨幣司を設置し、接収した旧金座や銀座で硬貨の鋳造を行いました。しかし、技術は未熟で、偽造貨幣も多く流通していました。これにより、貨幣管理が急務とされました。

大隈重信の幣制改革

明治2年2月、外国官判事兼会計御用掛である大隈重信の要請で造幣局が設立されました。大隈は通貨単位を両から円に改め、10進法を基本とすることを提案しました。そして、実際に新通貨「円」の施行までには2年を要しましたが、その過程で様々な課題に対処しました。

大隈は、旧貨幣との交換を促進する布告を出し、太政官札の信用を回復させる努力を行いました。明治3年11月27日には新貨幣の鋳造が開始され、造幣局が開設されました。新たな硬貨は金貨と銀貨、銅貨を含めて多様な種類が発行され、その後旧貨幣との交換が行われました。

新貨条例の制定

明治4年の新貨条例制定の準備は整ったものの、本位貨幣として金と銀のどちらを採用するかは難しい選択でした。最終的には一圓銀貨を本位貨幣にし、金貨を補助貨幣と位置づける案がまとめられました。そして、明治4年5月10日に新貨条例が布告されました。

新貨条例は、「前文論告」、「新貨幣例目」、「新貨幣通用制限」の三部構成から成り立っています。これにより、貨幣の基準単位が「両」から「円」に変更され、旧貨幣の廃止が進められました。また、補助単位として「銭」「厘」が導入され、10進法が確立されました。

本位貨幣は金貨と定められ、1円金貨は外国通貨との連動性をもつものでした。これにより、日本は旧来の複雑な貨幣制度から脱却し、より明瞭な通貨システムが実現しました。

新貨条例の影響と改正

新貨条例施行後、本位貨幣は無制限に通用することが定められ、貿易用に限り一圓銀貨が使用されるようになりました。しかし、流通が進む中で需要に応じた改正も必要でした。

その後、数回にわたって条例の内容は見直され、貨幣の品位や量目が変更されました。特に、貿易一圓銀貨に関して重要な改正がなされるなど、時代の流れと共に貨幣制度は柔軟に適応していきました。

新貨条例の施行以降、日本は貨幣制度の近代化を進め、国際経済における地位を確立していきました。この一連の流れが、最終的には明治30年（1897年）の貨幣法施行に繋がり、日本の貨幣制度が成熟を迎えることとなります。

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