一錦周之助

一錦 周之助（いちにしき しゅうのすけ、本名：鳴海 周之助）は、1924年5月20日に青森県東津軽郡横内村（現在の青森市）で生まれ、高嶋部屋に所属した大相撲力士です。身長177cm、体重79kgという現在の基準から見れば小柄な体格で、最高位は西十両7枚目でした。

角界へは17歳で足を踏み入れ、1942年1月場所に初土俵を踏みました。順調に出世し、初土俵からわずか9場所（当時の年2場所制において）で、1946年11月場所に新十両昇進を果たします。しかし、この場所を全休したことで一度幕下へ陥落。その後しばらく幕下で過ごしましたが、1949年5月場所で十両に復帰すると、以降は十両の地位に定着しました。現役時代は、突っ張りから右四つに組んで上手投げを打つ相撲を得意としていましたが、胃腸が弱かったため体重がなかなか増えず、80kgにも満たない体格で十両の地位を維持することに苦労しました。1952年9月場所を最後に十両から陥落し、その後一度も土俵に上がることなく、1953年5月場所限りで現役を引退しました。

引退後は年寄・安治川を襲名。後に8代友綱（小結・巴潟）の夫人の妹と結婚し、姻戚関係を結びます。8代友綱が停年を迎えると、9代友綱の名跡を継承し、友綱部屋を興しました。当初は部屋を持つ予定はなかったそうですが、自宅を測量した結果、稽古場を設けるスペースがあることが判明し、部屋を建てる運びとなったという逸話が残っています。

師匠としては、多くの弟子を育て上げることに尽力しました。特に、先代からの弟子であった魁輝を関脇まで昇進させ、自身の娘婿として部屋の後継者（10代友綱）としました。自身の現役時代は押し相撲でしたが、四つ相撲の取り手であった魁輝には、積極的に他部屋への出稽古を勧め、その指導を託したと言われています。魁輝以外にも、後に世話人となった王湖や、プロレスラーに転身した大刀光らを関取に育て上げました。また、アメリカ出身力士である戦闘竜を角界へ導いたことも特筆されます。そして何よりも、停年退職を目前にした時期に入門させた古賀博之こそが、後に大関へと駆け上がる魁皇その人でした。現役時代の最高位は十両に留まりましたが、師匠として大関を育て上げた功績は大きく、その指導力は現役時代を凌ぐものがあったと評価されています。

元十両の年寄が停年まで相撲協会に在職した例は比較的少なく、一錦は史上5人目の達成者でした。彼の停年退職後、元十両の年寄が停年まで務める例は、1997年7月場所に引退した元十両・大竜（15代大嶽）の襲名まで長らく途絶えることになります。

家族としては、巴潟の義弟であり、魁輝の義父にあたります。また、孫には後に力士となる魁将龍がいます。

2012年7月20日、肺炎のため東京都内の病院で88年の生涯を閉じました。喪主は娘婿である魁輝が務めました。

現役時代の通算成績は126勝124敗46休で勝率.504、十両では73勝92敗13休で勝率.442でした。現役在位は29場所、うち十両在位は12場所です。現役中には「三吉山」「日本錦」など、度々改名を行っています。

略歴
1942年1月場所：初土俵
1946年11月場所：新十両
1953年5月場所：現役引退、年寄・安治川襲名
1976年3月：9代友綱襲名
1989年5月：年寄停年退職

年寄変遷
安治川 嘉昭（1953年5月 - 1976年3月）
* 友綱 隆登（1976年3月 - 1989年5月）

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