一領具足

一領具足の概要

一領具足（いちりょうぐそく）は、戦国時代の土佐国において、長宗我部氏が編成した兵士およびその組織の名称です。この兵士たちは、武装農民や地侍を基にしており、平時には農業に従事し、必要に応じて武器を持って召集に応じるという特徴を持っていました。『土佐物語』では「死生知らずの野武士」とも描かれています。

兵士としての特徴

一領具足は、日常的には田畑を耕す農民として生活していましたが、領主からの動員があれば素早く戦闘に参加することが求められました。これを実現するため、農作業を行う傍らに常に槍と鎧を置いていたため、「一領」という語が使われました。一方で、正式な武士は通常、予備の具足を持つため、彼らが一領しか持たなかったことも、この呼称の由来の一つとされています。

一領具足の者たちは、農作業を行なっていることもあり、身体的に健全で集団行動にも適していたため、戦士としての水準は高いと考えられています。ただし、農繁期には戦闘に従事することが難しく、長期間の戦争には耐えられなかったと言われています。彼らの存在は、当時の織田氏のように兵農分離を果たした勢力と対比されるものであり、軍事制度の進化が異なる方向に進んでいたことが伺えます。

一領具足の歴史

一領具足の創造者としては、長宗我部国親が挙げられますが、実際にその運用を効率的に行ったのは彼の子、長宗我部元親です。元親は、この兵士たちを率いて四国の統一を達成しましたが、豊臣秀吉の四国征伐により領地を大幅に減少させられ、土佐国のみとなりました。その後、関ヶ原の戦いでの彼の四男、長宗我部盛親が西軍に与したため、戦後、彼らは領土を失いました。

新たに土佐を与えられたのは山内一豊でしたが、長宗我部家の遺臣たちはこの新しい領主に対して抵抗しました。特に、竹内惣右衛門を中心とする一領具足たちは、浦戸城の引渡しを拒否し、盛親に旧領の一部を要求しました（浦戸一揆）。山内一豊は弟の山内康豊を派遣し、反乱を鎮圧しましたが、遺臣団は城に籠城し抵抗を続けました。しかし、裏切りにより城が開かれ、273人の一領具足が斬首され、その首は井伊直政のところに送り込まれました。

また、高石左馬助を中心に滝山一揆などの反乱も発生しましたが、山内家はこれらを抑え、最終的に長宗我部の遺臣たちを郷士として取り込むことに成功しました。これにより、山内家は名家出身者を上士として任用したり、郷士の一部を特別な地位として扱う弾力的な体制を整えました。

一領具足の装備

一領具足が使用した装備としては、古頭形鉢兜や笠じごろ、鎧下着、脇差、腰紐、股引などが含まれていました。これらの武具は、戦闘において彼らが重要な役割を果たすためのものであり、特に農業と戦闘を兼ねるという独特の立場を反映しています。

参考文献

• - 山本大『長宗我部政権の変質と一領具足』日本歴史117号、1958年
• - 山本大『一領具足と走り者』歴史手帳11巻7号、1983年
• - 平井上総『一領具足考』花園史学36号、2015年

関連項目

• - 民兵

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