万福寺 (藤沢市)

鵠沼山 万福寺

万福寺は、神奈川県藤沢市鵠沼神明に位置する真宗大谷派（東本願寺系）の寺院です。この寺は、寛元3年（1245年）に武蔵国出身の僧、源海によって開山・創建されたと伝えられており、鵠沼地区で最も古い寺院の一つとして知られています。正式名称は「鵠沼山 清光院 萬福寺」と称します。

歴史

万福寺の創建者である源海は、親鸞聖人の弟子として仕えていました。故郷へ帰る際、親鸞聖人から聖徳太子自作とされる太子像を形見として譲り受けました。帰路、源海は江の島の岩屋に参籠し、夜の波間に光るものを見つけ、それが阿弥陀如来の立像であると感得したと伝えられています。霊地を求めて砥上ヶ原にたどり着いた源海は、鵠（白鳥）が棲む沼地を埋め立てて一宇を建立し、感得した阿弥陀如来像を安置しました。これが鵠沼山万福寺の始まりとされています。5年間の寺務の後、源海は寺を実子である誓海に譲り、故郷の荒木村へ戻り、建長5年（1253年）に89歳で遷化しました。

その後、万福寺は文亀2年（1502年）に火災で焼失しましたが、永正5年（1508年）に再興されました。しかし、間もなく北条氏綱による弾圧を受けます。享禄元年（1528年）、氏綱は領内の真宗寺院を迫害し、甲斐の武田信玄が本願寺と親戚関係にあり、真宗に好意的であったため、宗徒が一揆を起こして信玄に通じることを警戒しました。氏綱は相模の真宗寺院を浄土宗に改宗させ、鎌倉の光明寺の末寺にしようとしました。この時、万福寺の住職であった空円は、断固としてこの命令を拒否したため、六本松原で断殺され、寺は破却されました。伝えられるところによると、空円は静かに念仏を唱え、従容として死についたとされています。

寺は、享保3年（1718年）に没した良意によって中興されましたが、明治30年（1897年）9月に再び焼失しました。その後、仮堂での生活を余儀なくされましたが、復興を経て現在に至っています。

伽藍

本堂: 木造瓦葺きで、庫裡と客殿が付属しています。彫刻は藤沢彫川（一元）の永田謹一郎によるものです。
本尊: 木造阿弥陀如来立像で、像高64.3cm、総高181.5cm。寄木造で江戸時代の作です。かつて江の島で感得されたとされる旧本尊は明治30年の火災で焼失したため、現在の本尊は茅ヶ崎市小和田の阿弥陀堂から移入されたものです。
その他: 黒仏と呼ばれる阿弥陀如来立像（江戸前期の作）や、多数の阿弥陀如来坐像が安置されています。
太子堂: 木造瓦葺きの八角堂で、聖徳太子像を祀るために法隆寺夢殿を模して建てられました。2003年（平成15年）に落慶法要が営まれました。
鐘楼: 木造瓦葺きで、梵鐘は戦時中に供出されましたが、1983年（昭和58年）に復興されました。
山門、裏門: 木造瓦葺きで、彫刻は板倉聖峯（富士市）によるものです。

住職

開基である源海は、藤原鎌足の末裔とされ、武蔵国の武将であったと伝えられています。二児の死をきっかけに出家し、親鸞聖人の直弟子となりました。関東六老僧の一人として知られています。

著名な人物

万福寺は、俳人の良空（蕉窓）や、公害闘争を指導した前住職の荒木良正など、地域の歴史や文化に貢献した人物とも深く関わっています。境内には、蕉窓の句碑や大気汚染告発記念碑が建立されています。

墓碑

境内には、大磯屋の墓地や猪飼甚右衛門、阿部父子、内藤千代子、森銑三夫妻、江口朴郎など、様々な人々の墓碑があります。これらの墓碑は、万福寺の歴史と地域のつながりを物語っています。

万福寺は、創建以来、地域の信仰の中心として、また文化の発信地として、重要な役割を果たしてきました。その歴史と文化遺産は、今日においても訪れる人々に深い感銘を与えています。

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