丈部路石勝

丈部路石勝の生涯と犯罪歴

丈部路石勝（はせつかべのいわかつ）は奈良時代に活躍した下級官吏で、その姓は忌寸である。生没年に関する具体的な記録は残されていないが、彼の名前は『続日本紀』に登場し、ある事件を通じてその人生が明らかになる。丈部（はせつかべ）は、主に東国に広がっていた軍事部民として知られており、石勝はその一員として活動していたと考えられる。

事件の発端

720年、養老4年6月の出来事として、石勝は大蔵省漆部司（ぬりべのつかさ）において従八位上の令史を務めていた。この職務の中で、彼は仲間の泰犬麻呂（はたのいぬまろ）と共に、漆を盗む罪を犯してしまった。漆は価値の高い資材であり、特に官庁での保存・管理が厳格に行われていたため、この行為は重大な犯罪であった。

事件における「直丁」という役職は、全国から徴発された人々が仕えたことを示しており、漆部司では直丁の職員数は1人に限定されていた。このような環境下で、彼の行動は特に目立ったものとなった。犯罪の発覚後、二人は流罪としての判決を受けることになった。

判決とその後

流罪の刑罰は漆部司での金銭的損失と相まって刑法上も重いとされ、石勝の罪は特に監主罪に該当するとされ、厳罰が科せられることとなった。この罪は、官職を持つ者が自らの管理下にある物を盗んだ場合に適用され、抜け穴のない厳しい法体系のもとで判断される結果となった。特に、盗まれた漆の量から逃れがたい厳罰を受けることが予想された。

一方で、石勝には3人の息子がおり、彼らは父の罪を肩代わりする形で元正天皇に直訴した。天皇は彼らの訴えに心を動かされ、石勝の罪を赦免する代わりに、息子たちを奴隷の身分にしてしまう。その結果、家族の運命は大きく変わることとなった。

泰犬麻呂との違い

ここで非常に注目すべきは、同じく漆を盗んだ相棒の泰犬麻呂の扱いである。麻呂には家族がいるかどうかは不明であったが、都に住んでいなかったため、赦免の対象にならなかった。このことは、事件の中での石勝と泰犬麻呂の立場の違いを浮き彫りにし、公正さや権力の不均等も示唆している。

最終的には、石勝の息子や彼の家族も良民としての地位を回復することとなった。結果として、この事件は奈良時代の社会や官制度における複雑な人間関係や法律の一端を示すものであった。奈良時代の役人がどのような人間模様の中で生き、どのような運命をたどったのか、また、その処遇が家族にどれほど影響を与えたのかを考えさせられる事例となった。

参考文献

• - 『続日本紀』2　新日本古典文学大系13　岩波書店、1990年
• - 『続日本紀』全現代語訳（上）講談社学術文庫、宇治谷孟：訳、1992年
• - 『日本の歴史3　奈良の都』、青木和夫：著、中央公論社、1965年

関連項目

• - 丈部
• - 丈部氏
• - 元正天皇
• - 大宝律令
• - 漆

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