三十番神

三十番神：国家と国民を護る三十柱の神々

三十番神とは、神仏習合の信仰において、国家や国民を毎日交代で守護すると信じられていた30柱の神々です。旧暦では、1ヶ月が29日または30日であることから、この30柱の神々が1ヶ月を順番に守護すると考えられていました。

この信仰の起源は、天台宗の開祖である最澄（伝教大師）が比叡山に三十番神を祀ったことに遡るとされています。鎌倉時代になると広く信仰されるようになり、特に中世以降は日蓮宗や法華宗（法華神道）において重要な信仰対象となりました。

日蓮宗における三十番神の信仰が盛んになった背景には、日蓮宗の布教活動が深く関わっています。日蓮宗の僧侶である日像が京都での布教活動において、比叡山の三十番神を取り入れたことが、その信仰の普及に大きく貢献しました。彼らは、三十番神を法華経を守る神々（諸天善神）として崇敬しました。

一方、吉田神道においても三十番神信仰は独自の発展を遂げました。吉田神道では、「天地擁護の三十番神」「王城守護の三十番神」「吾国守護の三十番神」など、様々な三十番神の体系が唱えられ、吉田兼倶は三十番神信仰が吉田神道から発したと主張しました。興味深いことに、吉田神道では、天孫降臨の際の「三十二神」との関連も示唆されています。

歴史的には、三十番神の構成は十種類ほど存在したとされています。その内容は、「天地擁護」「内侍所守護」「王城守護」「吾国守護」「禁闕守護」「法華守護」「如法守護」「法華経守護」「仁王経守護」「如法経守護」など、それぞれの守護対象や経典との関連を示す様々な三十番神が存在しました。

明治時代初期には、神仏分離令により一時的に三十番神の配祀が禁じられる時期もありましたが、現在は各宗派や寺院の判断で、堂内祭壇や堂内摂社などの形で自由に祀られています。

三十番神の信仰は、法華経や灌頂経、仁王般若波羅蜜経といった仏典に記された、仏法による国家鎮護の思想を基礎としています。そこに日本の神々が取り入れられることで、独自の信仰体系として成立しました。

現代では太陽暦を採用しているため、1ヶ月に31日がある場合もあります。そのため、31日目の守護神として、五番善神（薬王菩薩、勇施菩薩、多聞天、持国天、鬼子母神、十羅刹女）を勧請する場合もあります。

三十番神は、単なる守護神を超え、日本の歴史と信仰の深いつながりを示す重要な存在と言えるでしょう。それぞれの宗派や時代によって解釈や構成が異なっていた点も、この信仰の複雑さと奥深さを物語っています。 日蓮宗における三十番神の具体的な一覧は、『神道大意』や『拾芥抄』といった文献にも記載されています。

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