日像

日像（にちぞう）

日像は、鎌倉時代に活躍した日蓮宗の僧侶です。俗姓は平賀氏で、幼名を経一丸といいました。下総国（現在の千葉県北部）の出身で、肥後房とも、肥後阿闍梨とも呼ばれました。彼は、日蓮宗における四条門流の祖として知られています。

生涯

建治元年（1275年）、日像は日蓮の弟子であった兄の日朗に師事し、その後、日蓮の直弟子となりました。この時、経一丸という名を与えられ、玄旨伝法本尊と呼ばれる曼荼羅本尊を授けられました。日蓮の没後、日像は遺命を果たすため、京都での布教を決意します。

永仁元年（1293年）、まず日蓮の足跡を辿り佐渡で法華経を広めました。その後、北陸の七尾へ向かう船中で、石動山の僧・満蔵（後の日乗）と法論を行い、彼を弟子としました。満蔵に招かれ石動山で法華経を説きましたが、山上の僧侶たちによって満蔵とともに追放され、これが後に羽咋妙成寺の創建につながりました。

永仁2年（1294年）、京都に入った日像は、すぐに朝廷に上奏しました。その後、街頭で法華経を説く辻説法を行い、柳屋仲興や大覚寺の僧・大覚など多くの人々の帰依を得ました。しかし、その活動は他の宗派からの反発を招き、徳治2年（1307年）には、延暦寺、東寺、仁和寺、南禅寺、知恩寺などの諸大寺から迫害を受け、朝廷に訴えられ、京都からの追放を命じられました。

追放中も、日像は洛西の真言寺住持・実賢、深草の極楽寺住持・良桂、松ヶ崎の歓喜寺住持・実眼らと法論を行い、彼らを折伏しました。延慶2年（1309年）に赦免され、京都に戻りましたが、延慶3年（1310年）には再び諸大寺からの訴えにより、京都から追放されてしまいます。翌年、再び赦免され京都に戻り、1321年（元亨元年）にも同様の追放処分を受けましたが、すぐに許されました。その後、後醍醐天皇から寺領を賜り、妙顕寺を建立しました。建武元年（1334年）には、後醍醐天皇から綸旨を賜り、法華宗号を許され、勅願寺となりました。

晩年は、南朝の後醍醐天皇の京都還幸を祈願する一方で、北朝の光厳上皇の祈祷も行うなど、公武双方から信仰を集めました。このように、日像の生涯は、法華経の普及に尽力し、度重なる迫害にも屈せず、その教えを広めた激動のものでした。

法華神道

日蓮宗には、法華経を三十番神が守護するという信仰形態（法華神道）があります。これは、日像が日蓮宗に取り入れたとされています。

関連寺院

日像ゆかりの寺院として、以下のものがあります。

妙顕寺（京都市上京区）
妙覚寺（京都市上京区）
立本寺（京都市上京区）
妙成寺（石川県羽咋市）
國前寺（広島市東区）
薬王寺（神奈川県鎌倉市）
清水房（山梨県身延町）

弟子

日像の弟子には、以下のような人物がいます。

大覚妙実
日輪 (池上本門寺、比企谷妙本寺両山3世)
日印 (本圀寺開山)

日像は、日蓮宗の発展に大きく貢献した僧侶の一人として、その名を歴史に刻んでいます。

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