三宅石庵

三宅石庵：懐徳堂初代学主、自由な学風を築いた儒学者

三宅石庵（みやけ せきあん）は、寛文5年（1665年）に京都で生まれた江戸時代中期の儒学者です。折衷学派に属し、浅見絅斎に師事しました。懐徳堂の初代学主として知られ、その学問は当時の学界に大きな影響を与えました。名は正名、字は実父、通称は新次郎。万年、泉石といった別号や俳号も持っていました。弟に同じく儒学者の三宅観瀾がいます。

朱子学にとどまらない、自由な学問

石庵の学問の特徴は、朱子学を基本としながらも、陽明学、古義学、医学など、さまざまな分野を柔軟に取り入れた点にあります。既存の学問にとらわれないその姿勢は、「鵺学問」と評されることもありました。この自由な学風は、石庵が学主を務めた懐徳堂の学風にも色濃く反映されています。また、石庵は書家としても知られており、その才能は多岐に渡っていました。

生涯

京都の町人儒者の家に生まれた石庵は、弟の観瀾と共に浅見絅斎の私塾で朱子学を学びました。しかし、陽明学に傾倒したことが原因で、放蕩を理由に破門されてしまいます。その後、江戸で観瀾と共に私塾を開きますが、うまくいきませんでした。元禄10年（1687年）に京都へ戻った石庵は、讃岐国琴平の豪農、羽屋木村平右衛門に招かれ、儒学を教授します。この頃から京都の豪商との交流も始まり、人脈を広げていきました。

元禄13年（1701年）、大坂で私塾を開くと、町人を中心に多くの門弟が集まりました。正徳3年（1713年）には塾が手狭になったため、門弟や木村家の資金援助を受けて安土町へ移転し、「多松堂」と名付けました。しかし、資金提供者の中に不適切な人物がいたとして、享保4年（1719年）に自身の資金で高麗橋へ移転します。享保9年（1724年）の享保の大火で被災した際には、郊外平野の郷学含翠堂に避難し、門弟への教授を続けました。

同年5月、門弟たちによって懐徳堂が設立され、石庵はその学主に就任しました。享保11年（1726年）には中井甃庵の尽力により懐徳堂が官立となり、石庵は記念講義で『論語』『孟子』の各第一章を講じました。その講義内容は『万年先生論孟首章講義』として後世に伝えられています。

享保15年（1730年）、石庵は亡くなりました。墓は大阪府八尾市の神光寺にあります。妻との間に二男二女をもうけましたが、次男以外は夭折。次男の三宅春楼は、後に懐徳堂の第三代学主となりました。

参考文献

西村天囚 『懐徳堂考』 懐徳堂記念会、1925年
岸田知子 「懐徳堂とその周辺」 2001年

関連項目

三宅観瀾
三宅春楼
* 懐徳堂

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