古義学

古義学（堀川学派）とは

古義学は、江戸時代に隆盛した儒学の一派です。当時の主流であった朱子学や陽明学の解釈に捉われず、儒教の原点である古代中国の聖賢の著した原典（『論語』や『孟子』など）に立ち返り、本来の思想を理解しようと主張しました。つまり、朱子学以前の「古い意義」を研究する学派なのです。

門人は約3000人と言われ、公家、諸侯から庶民まで、身分を超えて広く集まりました。その出身地は飛騨、佐渡、壱岐を除く全国に及び、常陸国水戸藩の『大日本史』編纂にも深く関わっています。江戸中期には、全国の儒者の過半数を占めるほどの影響力を持っていました。

古義学が後世に与えた影響は大きく、資料批判や礼楽制度の歴史的研究は、学問研究の基礎となりました。

古義学の成立

古義学の開祖である伊藤仁斎は、当初朱子学を学んでいましたが、その形而上学的な思弁と静止的な人生観に疑問を抱き、独自の思想を形成するに至りました。朱子学への批判こそが、古義学誕生のきっかけだったと言えるでしょう。

主な門人たち

古義学からは、多くの著名な学者たちが輩出されました。

伊藤仁斎
伊藤東涯
伊東梅宇
伊藤介亭
伊藤竹里
伊藤蘭嵎
並河天民
中江岷山
北村篤所
穂積以貫
* 小河立所

特に、仁斎の5人の子息は「伊藤の五蔵」と呼ばれ、中でも東涯と蘭嵎は「伊藤の首尾蔵」として知られています。

また、並河天民は仁斎の学説を受け継ぎつつも独自の視点を持ち、京都に私塾を開きました。仁斎の没後には、東涯と対立し、古学派の門人を二分するほどの勢力を持ったとされています。

中江岷山は、大坂において仁斎の学説を広める役割を担い、浅見絅斎や三宅尚斎らの説を批判しました。

堀川学派の由来

古義学が「堀川学派」とも呼ばれるのは、伊藤仁斎とその子・東涯が、京都堀川にあった仁斎の生家を私塾「古義堂」として開いたことに由来します。京都という場所柄、京都の富裕な町人や公家との関係が深かったことも特徴です。

古義学は、原典に立ち返ることで儒教本来の精神を追求し、江戸時代の学問に大きな影響を与えた学派と言えるでしょう。

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