三岐鉄道三岐線

三岐線の概要

三岐線は、三重県四日市市の富田駅から、いなべ市の西藤原駅までを結ぶ三岐鉄道の鉄道路線です。全長26.5kmの単線電化路線で、全線を通してローカルな雰囲気を残しています。この路線の特徴は、旅客輸送と貨物輸送の両方を担っている点です。特に、富田駅から東藤原駅間では、セメントを中心とした貨物輸送が盛んに行われています。かつては他の鉄道会社でもセメント輸送が行われていましたが、現在は三岐線が唯一の存在となっています。

旅客輸送においては、近鉄富田駅から山城駅にかけては住宅地が広がっており、通勤・通学路線としての役割が大きいです。山城駅を過ぎると、田園風景が広がり、伊勢治田駅からは藤原岳の麓を回り込むように進みます。沿線には、藤原岳への登山客も利用しますが、日常的な足としての利用が多いのが特徴です。

使用される車両は、西武鉄道から譲渡されたものが多く、黄色とオレンジ色のカラーリングが特徴です。近年では、JR東海から譲渡された211系が導入され、注目を集めています。また、駅ナンバリングが導入され、路線記号として「S」が割り振られています。

路線データ

路線距離:
三岐線：富田 - 西藤原間 26.5km（富田 - 三岐朝明間1.0kmは貨物営業のみ）
近鉄連絡線：三岐朝明信号場 - 近鉄富田間 1.1km
軌間: 1067mm
駅数: 三岐線15駅、近鉄連絡線1駅（いずれも起終点駅を含む）
複線区間: なし（全線単線）
電化区間: 全線（直流1500V）
最急勾配: 25パーミル（伊勢治田 - 東藤原間、東藤原 - 西野尻間）
最小曲線半径: 200メートル
閉塞方式: 自動閉塞式
保安装置: ATS-S形（改良型ATS-SW）
最高速度: 70km/h
IC乗車カード対応区間: なし

歴史

三岐線の歴史は、1928年に藤原鉄道として設立されたことに始まります。当初は、四日市市から関ヶ原町までを結ぶことを目指していましたが、最終的には富田駅から西藤原駅までの区間が開業しました。1931年に富田 - 東藤原間が開業し、同年末に西藤原まで延伸されました。

開業当初は国鉄富田駅が起点でしたが、近鉄富田駅への乗り換え客が多かったため、1970年に近鉄連絡線が開業しました。これにより、旅客列車の起点が近鉄富田駅に変更され、利便性が向上しました。2024年に入ってからは、ダイヤ改正、新制服の採用、駅ナンバリング導入、新型車両導入など、さまざまな変化が見られます。

年表

1883年：稲葉三右衛門が四日市 - 関ヶ原間の鉄道建設を申請するも却下。
1927年：浅野セメントが藤原鉄道、小野田セメントが員弁鉄道として鉄道敷設免許を申請。
1928年：藤原鉄道に対し四日市市 - 関ヶ原町間の鉄道敷設免許状が下付。三岐鉄道設立。
1931年：富田 - 東藤原間が開業。東藤原 - 西藤原間が延伸開業。
1932年：小野田セメント藤原工場操業開始。
1950年：富田 - 大矢知間に三岐朝明駅開業。
1952年：富田駅から国鉄四日市駅まで旅客列車直通運転開始。
1954年：全線電化。
1956年：電車運転開始。
1964年：富田 - 国鉄四日市駅間の直通運転廃止。
1970年：近鉄富田 - 三岐朝明間の近鉄連絡線が開業。
1985年：富田 - 三岐朝明間の旅客営業を休止、富田西口駅廃止。旅客列車は近鉄富田駅発着に統一。
1989年：三岐朝明駅を廃止、三岐朝明信号場に変更。急行廃止。
1997年：大長駅を移設し、北勢中央公園口駅に改称。自転車の持ち込みサービス開始。
2011年：台風による被害で全線不通となるも、後に復旧。
2012年：脱線事故が相次ぐ。骨材輸送を廃止。
2024年：ダイヤ改正、駅ナンバリング導入、JR東海から211系を譲受。

運行形態

旅客列車は、1時間に1～4本程度運行されており、近鉄富田駅 - 保々駅間の区間運転列車も設定されています。貨物列車の運行もあるため、パターンダイヤにはなっていません。一部列車では、保々駅で車両交換が行われ、乗り換えが必要となる場合があります。

全列車が各駅に停車する普通列車ですが、かつては急行列車も運行されていました。ワンマン運転が基本ですが、早朝や夜間には車掌が乗務することもあります。通勤・通学時間帯は混雑が激しく、特に暁学園前駅周辺は多くの学生で賑わいます。

貨物列車の行き違いのため、多くの駅で交換設備が備わっており、安全側線も設置されています。保々駅、伊勢治田駅、東藤原駅では貨物列車の待避も可能です。

自転車を持ち込めるサイクルパス制度があり、一部区間では終日、その他の区間では土日祝日や長期休暇期間に利用できます。

沿線概況

三岐線は、三重県北勢地域を東西に横断しており、沿線の風景は変化に富んでいます。起点である富田駅周辺は商業施設が多いですが、西藤原駅に向かうにつれて、住宅地、田園地帯、農村へと移り変わります。

近鉄富田駅は、近鉄名古屋線との乗り換え駅で、バスの発着も多く、三岐線で最も乗降客数が多い駅です。列車は近鉄名古屋線と並走し、関西本線をオーバークロスすると、貨物専用区間の三岐朝明信号場に至ります。関西本線を再び越えると、大矢知駅、平津駅、暁学園前駅、山城駅と続き、水田が広がる中に保々駅があります。保々駅は、車両基地やCTCセンターがある三岐線の中枢です。北勢中央公園口駅、梅戸井駅、図書館併設の大安駅、三里駅と続き、終点の西藤原駅に近づくにつれ、山岳地帯の風景が見られるようになります。丹生川駅には貨物鉄道博物館が、東藤原駅には太平洋セメント工場が隣接しており、三岐線の特色を象徴する場所となっています。

運賃・切符

三岐線では、普通乗車券、回数券、定期券が販売されています。かつては、普通回数券や昼間割引回数券がありましたが、2024年11月末で販売を終了しました。通学定期は、学期定期など様々な種類が用意されています。近鉄名古屋線、湯の山線、鈴鹿線との連絡定期券も発売されていますが、その他の路線との連絡定期券・切符は設定されていません。

企画乗車券として、「三岐鉄道1日乗り放題パス」が販売されており、三岐線と北勢線全線で利用可能です。

輸送実績と営業成績

三岐線の輸送実績は、近年では北勢線と合算されているため、単独のデータは存在しません。輸送人員は、1965年以降最高値を記録し、その後最低値を記録しました。営業成績についても同様で、2011年度までは単独データが存在しますが、それ以降は北勢線と合算されています。

営業区間および駅一覧

三岐線は、旅客営業を行う近鉄富田駅 - 西藤原駅間と、貨物営業のみを行うJR富田駅 - 三岐朝明信号場間に分かれます。全駅・信号場とも三重県に所在しています。

旅客営業区間には、近鉄富田駅、暁学園前駅、保々駅、北勢中央公園口駅、大安駅、三里駅、丹生川駅、伊勢治田駅、東藤原駅、西野尻駅、西藤原駅などがあります。貨物営業区間には、富田駅、三岐朝明信号場があります。また、かつては、富田西口駅、三岐朝明駅などの廃止駅も存在しました。

車両

三岐線で使用される車両は、かつては様々な鉄道会社からの譲渡車や自社発注車がありましたが、現在は西武鉄道からの譲渡車が中心です。2024年には、JR東海から211系が譲渡されました。現有車両は、3両編成の801系・851系・751系と、2両編成の101系です。

電気機関車は、貨物列車牽引用としてED45形、ED5081形、入換用としてED301形が在籍しています。また、事業用車としてワム200形が残存しています。

その他

1952年から1964年の間には、国鉄四日市駅まで直通する旅客列車が運行されていました。また、富田駅構内には、近鉄富田駅への乗換客のために富田西口駅というプラットホームが存在していました。1983年には、刑事ドラマ『太陽にほえろ!』のロケ地としても使用されました。

これらの情報から、三岐線は地域に密着した鉄道であり、貨物輸送と旅客輸送の両方を担っている重要な路線であることがわかります。沿線の風景や歴史も魅力であり、多くの人に親しまれています。

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