三教会同

三教会同とは

1912年2月25日、内務次官の床次竹二郎の主導により、神道、仏教、キリスト教の代表者計71名が華族会館に集められ、三教会同が開催されました。この会同は、内務大臣の原敬による挨拶で始まり、国家が宗教を利用する動きの頂点と見なされ、政教界において大きな問題となりました。会同の背景には、幸徳事件後の社会情勢に対する政府の対応策として、床次竹二郎が主導した動きがありました。

各宗教の立場

神道

宗派神道（教派[[神道]]）は、キリスト教や仏教との同一視を強く拒み、当初は会同に協力的な姿勢を示しませんでした。しかし、1912年1月23日の神道懇話会臨時総会からわずか数日後の1月27日には、神道十三派の代表者会議で意見が一致し、会同への参加が決まりました。この背景には、1906年の第一次西園寺内閣による神社合祀政策により、約20万社あった神社が半減したという状況がありました。国家の祭祀としての体裁は整えられたものの、府県社以下の神社は維持が困難となり、宗教活動を通して維持を図る必要がありました。そのため、教派[[神道]]は参加に至りましたが、神社神道は参加を拒否しました。

仏教

仏教界は、政府の意向には賛同を示しつつも、反キリスト教感情や仏教の特権意識、祖先崇拝や神社崇拝の項目削除などから、会同への反対機運が強まっていました。しかし、明治維新時に政府に没収された寺領地の無償交付を期待し、曹洞宗、浄土宗、真言宗智山派、真言宗豊山派、日蓮宗が会同への出席に協力しました。これにより、仏教界は政府当局者を凌ぐほどの熱意で会同に臨むこととなりました。この背景には、1910年から1911年にかけての幸徳事件直後の第27回帝国議会で、村松恒一郎らが「危険思想防止策」に関する質問を行い、桂太郎首相らが神仏二道という答弁をしていたことがあります。キリスト教を加えていない点が注目されます。

キリスト教

キリスト教界からは、日本メソヂスト教会の本多庸一、日本組合基督教会の宮川経輝、バプテストの千葉勇五郎、日本基督教会の井深梶之助、日本聖公会の元田作之進、カトリック教会の本城昌平、日本ハリストス[[正教会]]の石川喜三郎が出席しました。一方で、内村鑑三や柏木義円は会同に反対しました。日本のキリスト教会の中には、この会同を憲政史上初めて神道・仏教と対等に扱われたと歓迎する人々もいましたが、無教会派の人々を中心に、政府主導の宗教政策に乗ることは政教癒着を招き、宗教の主体性を失わせると批判する人々もいました。本多庸一は、神社神道が招かれていないことに対し、「神道も立派な宗教だ」と述べ、将来的に神道も含めた会同を行うべきだと提言しました。

会同の影響

三教会同は、国家が宗教を政治利用した象徴的な出来事として、その後の日本の宗教政策に大きな影響を与えました。この会同は、各宗教の思惑が複雑に絡み合う中で、日本の宗教史における重要な転換点となりました。

参考資料

吉田久一『近現代仏教の歴史』筑摩書房、2017年
E.E.ケアンズ、『基督教全史』、いのちのことば社、2016年。
中村敏、『日本キリスト教宣教史』、いのちのことば社、2009年。
土肥昭夫、『日本プロテスタント・キリスト教史』、新教出版社、1998年

関連項目

宗教家懇談会
帰一協会

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