三日月ロック

スピッツ 10th アルバム『三日月ロック』

『三日月ロック』は、日本のロックバンド・スピッツが2002年9月11日にリリースした10枚目のオリジナルアルバムです。ユニバーサルミュージックより発売され、レーベルはユニバーサルJが担当しました。初回盤ではブックレットの素材が異なる仕様となっています。

アルバム概要

本作は、前作『空の飛び方』以来、アルバムタイトル曲が収録されていない作品です。タイトルはレコーディングが行われた都内のスタジオ「CRESCENTE STUDIO」に由来しています。また、ボーカルの草野マサムネは、「スピッツは太陽や星よりも三日月のような存在でいたい」と語っています。

本作からプロデューサーに亀田誠治を迎えました。これは2001年にリリースされたシングル「さわって・変わって」のプロデュースを亀田に依頼した際、その仕上がりが良かったため、アルバム全体のプロデュースも依頼することになったためです。これまで、レコーディングの最終段階である歌入れまで歌詞が完成していないことが多かったスピッツですが、亀田の意向により、歌詞を完成させてからレコーディングを行うスタイルに変わりました。

また、本作は発売の約1年前に発生したアメリカ同時多発テロ事件の影響が強く出ている作品でもあります。草野は「ニヒルな歌詞は書けない状況だった。どこかにポジティブな言葉を入れないと嫌だった」と当時を振り返っています。

前作から本作までの間にリリースされたシングルの中で、「夢追い虫」のみアルバムには収録されていません。

マスタリングは、前作に引き続きスティーブン・マーカソンが担当しました。

収録曲と楽曲解説

1. 夜を駆ける
- アルバムの1曲目としては珍しく、演奏時間が最も長い楽曲です。2005年にはアニメ『ハチミツとクローバー』の挿入歌としても使用されました。
- アルバムのラストをポジティブに終える構成を考えていたため、1曲目に落ち着いた雰囲気の本曲を持ってきたとされています。
- 漫画『ワールドトリガー』の主人公、空閑遊真のイメージソングとして公式に発表されています。

2. 水色の街
- アルバムの先行シングルとして「ハネモノ」と同時発売されました。

3. さわって・変わって
- 亀田誠治をプロデューサーに迎えて初めてレコーディングされたシングル曲です。

4. ミカンズのテーマ
- 「もし新しくバンド名をつけるとしたら」という発想から生まれた、架空のバンド「ミカンズ」をテーマにした楽曲です。
- 草野の花粉症がひどかったため、ボーカルテイクは沖縄県のスタジオでレコーディングされました。
- 間奏のギターソロは、草野と三輪テツヤが同時に演奏しました。

5. ババロア
- スピッツ初のダンスビートを取り入れた楽曲です。全編にわたりドラムは打ち込みで作成されていますが、随所に崎山龍男による生ドラムも入っています。
- 草野が打ち込みのデモ音源を持ち込んだ際、その雰囲気が良かったため、打ち込みの良さを生かしたレコーディング方法が採用されました。

6. ローテク・ロマンティカ
- アルバムの中で最後に作られた楽曲で、アルバム全体を引き締める意味が込められています。

7. ハネモノ
- カルピスのCMソングとして使用され、先行シングルとしてもリリースされました。

8. 海を見に行こう
- JR東日本のキャンペーンソングとして使用されました。歌詞には「バスで行こう」と歌われています。ベースにはヘフナーのヴァイオリンベース、アンプにはVOXが使用されました。
- 草野は「サイケ感が出せたかな」と語っています。

9. エスカルゴ
- 激しいドラム連打から始まるロックナンバーです。草野が、ドラえもんに登場するひみつ道具「デンデンハウス」をイメージして制作しました。ライブでは、イントロの途中で三輪または田村が会場の地名を叫ぶのが恒例となっています。仮タイトルは「ザンダー」で、チープ・トリックのメンバー、ロビン・ザンダーに由来します。
- この曲のギターソロも草野と三輪の同時録音です。

10. 遥か (album mix)
- TBS系ドラマ日曜劇場『Love Story』の主題歌として2001年5月にリリースされたシングルです。アルバムの流れとは異なるものの、「せっかくだから入れよう」ということで収録されました。
- アルバムの雰囲気に合わせるため、ミックスが変更され、オルガンやベースの音色が調整され、イントロにギターが追加されました。

11. ガーベラ
- 25枚目のシングル「さわって・変わって」のカップリング曲です。

12. 旅の途中
- アルバムを締めくくり、まとめる役割を持つ楽曲です。バンドとして「まだ旅の途中」という思いが込められています。

13. けもの道
- アルバム曲としてリリースされましたが、後にイオン「happy face」のCMソングに起用されました。
- 歌詞は応援歌であり、ライブでは歌い出しの「東京の〜」の部分がコンサート会場の地名に変更されて歌われます。イントロのベースはレッド・ツェッペリンの「コミュニケイション・ブレイクダウン」をイメージして演奏されています。

演奏メンバー

草野マサムネ：ボーカル、ギター（#1-13）
三輪テツヤ：ギター、バックグラウンドボーカル(#4)、Additional Guitar in 2002 (#10)
田村明浩：ベースギター、バックグラウンドボーカル(#4)
崎山龍男：ドラム、[タンバリン]、[カウベル]、バックグラウンドボーカル(#4)

その他の参加メンバー

中山信彦：プログラミング（「夜を駆ける」「水色の街」「さわって・変わって」「ミカンズのテーマ」「ババロア」「ローテク・ロマンティカ」「ハネモノ」「海を見に行こう」「ガーベラ」「旅の途中」「けもの道」）
クジヒロコ：オルガン（「水色の街」「さわって・変わって」「海を見に行こう」「遥か」「けもの道」）、チェンバロ（「海を見に行こう」）
山本拓夫：フルート（「海を見に行こう」）
石田小吉：シンセサイザー、プログラミング（「遥か」）

アナログ盤

2003年3月5日には、ボーナスライブトラックとして、2002年11月14日の神奈川県民ホールでのライブ音源「ローテク・ロマンティカ」と「けもの道」を追加収録した2枚組のアナログ盤が限定発売されました。最高位は156位。

発売後、「さわって・変わって」のイントロ部分で音が一瞬途切れている不良品が発覚し、回収・交換が行われました。修正後のプレス盤には、ジャケット裏の左下に銀色の丸いシールが貼られています。

ジャケットには、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのジャケットを手がけている中村佑介によるイラストが使用されています。

曲順と構成

DISC 1

A Side:
夜を駆ける
水色の街
さわって・変わって
ミカンズのテーマ
ババロア

B Side:
ローテク・ロマンティカ
ガーベラ
旅の途中
けもの道

DISC 2

C Side:
ハネモノ
海を見に行こう
エスカルゴ
遥か (album mix)

D Side:
ローテク・ロマンティカ (Bonus Live Tracks)
* けもの道 (Bonus Live Tracks)

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