三日月情話

三日月情話

『三日月情話』は、1976年4月5日から5月21日にかけて、東海テレビ制作・フジテレビ系列で放送された昼ドラマです。全35回で、それまで15分だった東海テレビ制作の昼ドラマとしては初の30分シリーズとして制作されました。

概要

本作は、男女2人が全裸でもつれ合う衝撃的なオープニングが話題となりました。日本各地に残る「浦島伝説」を題材にし、揺れ動く男女の心情を、古代史や民族の因縁を交えて描くという、当時としては非常に斬新な作品です。特に前半は、実際の大学教授や宮司にインタビューを行うドキュメンタリーのような手法が用いられ、ドラマでありながら現実味を帯びた演出が試みられました。

脚本は、少数民族や日本の古代史をテーマにした作品を多く手がける佐々木守が担当し、円谷プロから派生した日本現代企画が制作に携わったことで、独特の世界観が構築されました。佐々木守は、後に本作の小説版を出版し、さらに登場人物を中学生に置き換えたジュブナイル小説「竜宮城はどこですか」も発表しています。また、佐々木は、NG企画となった『ウルトラマン怪獣聖書』や、それをアレンジした映画『ウルトラQ ザ・ムービー 星の伝説』でも、本作と同様のテーマで脚本を執筆しています。

第34話では、ナレーションを担当する渡辺美佐子が顔出し出演する演出も話題を呼びました。最終回となる第35話は、渡辺がドラマ制作の意図を語る総集編として放送され、最後の数分では、主人公の克子が浦島太郎の童謡の一節を歌い、愛し合う鋭一と手を取り合い、出雲族の人間として常世島で生きるために社に入っていくシーンで物語は幕を閉じます。そのため、実質的な最終回は第34話となります。

登場人物

神崎克子（かんざき・かつこ）

本作の主人公。妊娠を告げられたその日、夫・拓也が「竜宮城に行く」と言い残して失踪。夫を探す中で、千葉の三日月村にたどり着きます。そこで強制堕胎手術という悲劇に見舞われるも、下条鋭一との間に愛が芽生え始めます。その後、常世の島で夫の拓也と再会・決別し、鋭一と結ばれます。しかし、村に軟禁状態となり、脱出を試みる中で、岡島にそそのかされ、村の分裂工作を行います。その後、尾形トメに亡き母の面影を見出し、拓也の生き方や常世思想に共鳴し、出雲族側として行動することを決意します。最終的には三日月村の民を逃がし、新たな乙姫として鋭一と共に常世島に残ります。

下條鋭一（しもじょう・えいいち）

もう一人の主人公。失踪した妻・佐知子を探して浦島伝説ゆかりの地を訪ね歩く中で克子と出会い、行動を共にします。克子とは対照的に、次々と起こる事件にも動じず、常に前向きで爽やかな生き方を貫きます。歴史や社会問題にも深い見識を持ち、岡島との論戦でも互角に渡り合います。三日月村の人々によって様々な困難に遭いますが、最終的に佐知子との決別を決意し、克子と結ばれます。また、岡島の民族浄化論に反発し、少数民族である出雲族の生存権を守るために戦うようになります。最終的には、克子と共に三日月村の民を逃がし、乙姫の夫として、愛する克子と常世島で生きる道を選びます。

神崎拓也（かんざき・たくや）

物語の発端を作った人物で、克子の元夫。会社員でしたが、突然「竜宮城に行く」と言い残して失踪します。故郷は湖の底に沈んでしまった出雲族末裔の集落・木曾粕谷村。元々は乙姫の花婿候補次点でしたが、筆頭候補の急死によって繰り上がり、新妻だった克子を捨てて三日月村・常世島の乙姫の元へ向かいます。出雲族の純潔のために生きることを誓い、後を追って再会した克子にも「この世には愛より強いものがある」と拒絶します。しかし、内心では克子のことを気にかけ、鋭一と新しい人生を送ってほしいと願っていました。村のために行動してくれた克子と鋭一に応えるため、岡島と直接対決しますが、妥協点を見出すことはできませんでした。その後、乙姫を逃がし、佐知子を乙姫のダミーとして二人で常世島にこもりますが、克子と鋭一に説得されて脱出します。

下条佐知子（しもじょう・さちこ）

鋭一の元妻。拓也が失踪する半年前から失踪しており、その直前には拓也と同じく全国各地の浦島伝説ゆかりの地を訪ね歩いていたとされています。故郷も拓也と同じ木曾粕谷村。三日月村の村人により「夫婦のあかし」を強要され、克子と鋭一が絡み合っていた背後に突然現れます。乙姫の話し相手として村に連れてこられますが、当初は村での生活に我慢できず、鋭一と共に村からの脱出を試みます。しかし失敗し、常世島で鋭一と再会した時には、逆に脱出を呼びかける鋭一を拒否し、出雲族として生きることを決意しています。拓也同様、夫だった鋭一の新しい人生と幸福を願いながら、克子に「下条をよろしくお願いします」と告げて鋭一を託しました。終盤、乙姫のダミーとして岡島と戦おうとしますが、克子と鋭一の説得を受けて、拓也と共に常世島を脱出します。

乙姫（おとひめ）

本名不明。出雲族の純血・統合の象徴であり、三日月村沖合いの常世島で祭祀を司ります。先代乙姫であるトメの実娘。拓也を夫に迎え、新しい命を身ごもります。岡島に拉致され、困難に見舞われますが、最後は出雲族の未来を背負い、村人たちと脱出します。第34話まで一切の台詞がなかったのは、神秘性を演出するためであり、演じる石原初音の演技力も関係しているという説もありますが、真相は不明です。

尾形トメ（おがた・－）

通称おばば。当初は不気味な隣人として克子のアパートに引っ越してきますが、その後東京のビルの一室で祭壇を作り、儀式を行っていたことがわかります。そして、克子が丹後から戻ると、すでにアパートから引っ越しており、後に三日月村で再会します。乙姫の母にして、三日月村の出雲族を束ねる長。当初は克子と鋭一に対して情け容赦なく振る舞い、苦しめますが、徐々に心境が変化し、最後は克子に謝罪を連発します。マムシに噛まれた克子を命がけで助けるなどして和解します。一方、敵である久米一族・岡島に対しては、ダイナマイトを持ち込むなど、高齢とは思えぬ凄まじい闘志を見せますが、終盤では出雲族の存続を願い、村人を逃がし、一人村に残ります。

広田サキ（ひろた・－）

ケイとともにトメの脇を固め、三日月村を束ねる巫女で、みどりの母。ケイと比べて高齢で、克子に対して特に攻撃的でした。特に娘のみどりが巫女になることを拒否し、東京に出て行ってからは精神的に動揺し、２度にわたって克子の小屋を襲撃しました。この行動がきっかけで、克子による三日月村首脳部分裂作戦の標的にされてしまいます。みどりが岡島に拉致された際、克子と共に東京へ向かおうとしますが、途中で克子がマムシに噛まれたことにより挫折します。その後、麻里子によって救出されたみどりと再会し、和解します。また、この件で克子・鋭一とも和解し、彼らを擁護する立場に回ります。最後は、乙姫を守って、ケイとともに村を脱出します。

広田みどり（ひろた・－）

サキの娘。巫女になることを嫌がり、村を出て東京で働こうとしますが、聞き入れられません。克子と鋭一を船で常世島に渡そうとしますが、失敗します。危うく母親のサキによって熱湯による盟神探湯の禊をやらされそうになりますが、トメの一笑によって許され、東京で働くことに。村を出る際に克子から友人の律子を紹介され、彼女と懇意になります。しかしその後、岡島に村の分裂工作を依頼された克子は、自らの村からの脱出と引き換えに、みどりの拉致によるサキの村からの離反を画策します。克子の指示を受けた律子によって岡島の事務所に呼び出され、そのまま監禁されてしまいます。その後、麻理子の活躍によって、同じく囚われていた鋭一と共に事務所を脱出し、ケイから事態の全貌を聞かされると改心し、巫女となることを決め、サキと和解します。

山村ケイ（やまむら・－）

サキとともにトメを補佐する巫女。「男の移り気に嫌気がさして」男を断ち、巫女になったと本人は語ります。サキほど攻撃的ではありませんが、克子たちを憎悪していました。最後はサキと同じく乙姫とともに脱出します。

岡島幹彦（おかじま・みきひこ）

関東観光開発株式会社の開発部長という肩書で物語終盤に登場します。当初は、常世島をレジャーランドにしたいと村にまとわりつく悪徳不動産業者でしたが、実は1500年前に出雲族や熊襲などを滅ぼした大和朝廷の近衛軍団、久米一族の子孫でした。手下を使い、克子、鋭一、みどり、乙姫などを拉致監禁するなど、あの手この手で三日月村を葬り去ろうとします。アジトは、都内某ホテルの一室と、フラメンコバーの奥の部屋で、どちらの部屋の壁にも日の丸が大きく貼られており、その裏には「撃ちてし止まん」で有名な久米歌の額縁が隠されています。資金源はフラメンコバーの売上とも言われていますが、詳細は不明です。

麻里子（まりこ）

本名不明、通称まりちゃん。さすらいのヒッチハイカーで、日米混血と思われます。常世島を探していた克子と鋭一の前に突然現れ、あっけなく島を発見します。そして、二人のためにモーターボートを手配し、島に上陸させます。その後、克子と鋭一は村人によって厳罰を受けますが、自身は「何もわかっていない異国の人」とされて不問となります。克子と鋭一が村に軟禁状態となっても、彼女は外の世界と自由に行き来することができました。そうこうしているうちに鋭一への想いが募りアタックしますが玉砕し、潔く身を引きます。そして、鋭一への最後のはなむけとして、岡島に監禁された鋭一の救出作戦を敢行し、岡島の事務所に突入して、鋭一とみどりを解放します。その後、二人を川崎のフェリー埠頭で見送ったのを最後に、どこへともなく去っていきます。時々英語で話す癖があり、その時は台詞が字幕で表示されます。

キャスト

神崎克子：藤田弓子
下条鋭一：有川博
神埼拓也：中山仁
髙木律子：水上竜子
尾形トメ（通称おばば）：村田知栄子
江波麻理子：エバ
下条佐知子：小野ひずる
山村ケイ：白石奈緒美
広田サキ：町田博子
広田みどり：関いづみ
乙姫：石原初音
岡島幹彦：内田稔
坂本：東龍明
ナレーション：渡辺美佐子

スタッフ

プロデューサー：出原弘之、小林哲也
音楽：司一郎
監督：真船禎
脚本：佐々木守
撮影：内海正治
照明：新井盛
美術：池谷仙克
制作：東海テレビ、日本現代企画

主題歌

「ためらいの明日」

挿入歌

「追想曲」
作詞：石坂浩二、作曲：司一郎、編曲：高田弘、歌：藤田弓子

脚注

外部リンク

三日月情話【一挙】 || ファミリー劇場
* 三日月情話 - テレビドラマデータベース

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