三枚起請

三枚起請

「三枚起請（さんまいきしょう）」は、上方落語を初代三遊亭圓右が東京に移植した古典落語です。元々は難波新地のお茶屋が舞台でしたが、東京では吉原遊廓を舞台としています。五代目古今亭志ん生が得意とした演目として知られています。

あらすじ

遊廓ではかつて、客と遊女が将来夫婦になる約束として起請文を交わすことが流行していました。ある日、町内の若い男3人が、それぞれ馴染みの遊女から起請文をもらったという話になります。しかし、名前を確認すると、3人とも相手の遊女が同じ名前だったため、嘘をつかれていたことに気づきます。しかも、3人のうち1人は、妹からお金を借りて借金の肩代わりまでしていたのです。

これは他にも多くの男が騙されているのではないかと考えた3人は、遊女を懲らしめることにしました。そして、3人で遊郭へ行き、1人が遊女を待ち、他の2人はそれぞれ押し入れと衝立の陰に隠れます。遊女がやってくると、男は「他にもお前から起請文をもらったという奴がいるぞ」と問い詰めます。まさか隠れているとは思わない遊女は否定し、男たちの容姿をけなします。そこへ隠れていた2人が現れると、遊女は驚くどころか、男を騙すのが仕事だと開き直ります。

男は熊野牛王符の逸話に触れ、「起請文に嘘を書くと熊野の神であるカラスが3羽死ぬというが、お前のせいで熊野中のカラスが死にそうだ」と非難します。すると遊女は、「むしろ私は世界中のカラスを殺してやりたい」と返します。男が理由を尋ねると、遊女はこう答えます。

「ゆっくり、朝寝がしてみたい」

サゲの解説

この噺のサゲは、高杉晋作が品川遊郭の土蔵相模で作ったとされる有名な都々逸「三千世界の鴉（からす）を殺し ぬしと朝寝がしてみたい」を踏まえたものです。遊女の何気ない一言に、遊郭で働く女性の悲哀が込められています。

起請文に嘘があったり、破ったりした場合にカラスが死ぬという言い伝えは、起請文として一般的だった熊野牛王符に由来します。熊野の神使であるカラスが死ぬことは、約束を破った者は地獄に落ちることを意味します。

また、別のサゲとして、3人に「ハナ（端）からシマイ（終い）まで説明しろ」と詰め寄られた遊女が「シマイ（四枚）？　私が書いたのは三枚だけよ」と返すものもあります。

関連項目

* 禁演落語

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