三河島町

三河島町（みかわしままち）

三河島町は、かつて東京府北豊島郡に存在した町であり、現在の東京都荒川区の中央部に位置していました。この地域は、歴史的に重要な役割を果たし、多くの変遷を経て現在に至っています。

地理

現在の地名では、おおむね荒川、町屋（六丁目、七丁目の一部を除く）が三河島町にあたります。この地域は、かつては三つの川に囲まれた中洲状の地形であり、その地理的特徴が地名の由来にも影響を与えたと考えられています。

歴史

地名の由来

「三河島」という地名の由来には、いくつかの説があります。

地形説: 中川、古利根川、荒川という三つの川に囲まれた中洲状の土地であったため。
武将説: 太田道灌の時代に、武家歌人の木戸三河守孝範が当地に住んでいたため。
徳川家康説: 徳川家康の関東入部の際、三河国から来た者がこの地を知行した、または農民を住まわせたため。

ただし、戦国時代の史料にはすでに「三河ヶ島」という地名が見られるため、徳川家康にまつわる説は後世の俗説である可能性が高いとされています。

沿革

1889年（明治22年）: 町村制の施行により、町屋村の全域と、三河島村、千住南組、三ノ輪村の一部が合併し、三河島村が発足しました。
1920年（大正9年）: 三河島村が町制を施行し、三河島町となりました。
1923年（大正12年）: 三河島事件が発生しました。
1932年（昭和7年）: 北豊島郡が東京市に編入され、三河島町は東京市荒川区の一部となりました。
1960年代: 第二次世界大戦後、三河島町の地名は大部分が「荒川」に、一部が東尾久、東日暮里、西日暮里に編入され、消滅しました。

「三河島」の地名のその後

「三河島」という地名は、1960年代に大部分が「荒川」に編入されて消滅しました。この地名変更の背景には、三河島が荒川区の行政の中心であったことや、1962年に発生した三河島事故のイメージを払拭する意図があったとする説もあります。しかし、地図研究家の今尾恵介氏はこの説を俗説として退けています。実際には、事故の半年前には大部分が荒川に変更され、その後数年かけて残りの部分も周辺の町に編入されました。現在では、常磐線三河島駅や京成電鉄新三河島駅、金融機関の支店名などにその名残をとどめるのみとなっています。

人口

三河島町の人口は、1920年から1930年の間に著しく増加しました。

1920年：21,623人
1925年：59,252人
1930年：80,217人

交通

鉄道

国鉄（現JR東日本）: 常磐線 三河島駅
京成電鉄: 本線 新三河島駅、町屋駅
王子電気軌道（現東京都電車）: 王子電気軌道線 千住間道駅、三河島駅、博善社前駅、稲荷前駅、町屋駅

都電荒川線の荒川一中前停留場は、三河島町が存在していた当時はまだ存在していませんでした。

経済

農業

三河島町は、江戸時代から近郊農業地帯として発展しており、農業が盛んでした。特に、三河島菜という特産品が有名でした。

三河島菜

三河島菜は、漬け菜の代表格として江戸の食文化を支えた野菜の一つです。小松川の小松菜と並ぶ人気を誇っていましたが、白菜の普及や宅地化により生産が減少しました。しかし、仙台藩の足軽が持ち帰ったものが「芭蕉菜」として仙台で栽培され、2010年には三河島菜がルーツであることが判明しました。近年では、東京西部の農家で「青茎三河島菜」として栽培が再開され、東京への「里帰り復活」を果たしています。

地主

三河島町の地主としては、「松本釜次郎、伊藤岩吉、伊藤梅吉、伊藤鎌吉、伊藤佐太郎、伊藤安兵衛、伊藤亦次郎、伊藤美佐子」などが知られています。

商工業

肥料商の秋元喜市や、皮革商の秋元源彌（近江屋、秋元皮革社長）などが三河島で事業を展開していました。

工場

大野製革工場（1895年1月開業）
本田セーム革工場（1923年5月開業）

地域

施設

町屋火葬場
三河島汚水処分場（日本初の近代的汚水処理場、1922年稼働）

名所旧跡

三河島周辺には、「三河島八景」と呼ばれる景勝地がありました。これらの景勝は、かつての美しい自然を偲ばせるものです。八景は以下の通りです。

芝原の秋月
一本橋の夜雨
荒木田の落雁
庚申の暮雪
菅苗の夕照
千住の晩鐘
白小屋の帰帆
高畠の晴嵐

これらの八景は、1986年に地元郷土史団体によって浮世絵として復元されました。

関連情報

関連書籍

入本英太郎編『三河島町郷土史』（三河島町郷土史刊行会、1932年）

関連項目

東京都の廃止市町村一覧
北豊島郡
三河島駅
* 三河島事故


三河島町は、その歴史と文化が今もなお、様々な形で息づいています。この情報は、地域の歴史を深く理解するための手助けとなるでしょう。

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