三菱・ミニキャブ

三菱自動車 ミニキャブ：55年の歴史を誇る軽貨物車の変遷

三菱自動車工業が製造・販売する軽貨物車「ミニキャブ（MINICAB）」は、1966年の初代モデル登場以来、半世紀以上にわたり日本の物流を支えてきました。この記事では、ミニキャブの歴史と進化について詳しく解説します。

ミニキャブの概要

ミニキャブは、トラックとバンという2つのボディタイプを持つ軽自動車です。2023年現在、三菱自動車が自社で生産する唯一の軽自動車となっています（電気自動車のミーブおよびEVを除く）。

かつては豪華仕様の「ミニキャブブラボー」というグレードがありましたが、独立車種としては1999年に消滅しました。しかし、2011年に上級グレードの名称として復活しています。軽自動車の商標としては5番目に古く、長い歴史を持つモデルです。乗用モデルとしては「タウンボックス」という名称で販売されていましたが、後に廃止され、グレード名として「ブラボー」が復活しました。

6代目モデルは、日産自動車にOEM供給され、「クリッパーバン」「NV100クリッパー」「クリッパートラック」「NT100クリッパー」として販売されました。また、乗用1BOXモデルのタウンボックスは「クリッパーリオ」としてOEM供給されていました。2011年には、ミニキャブをベースにした商用電気自動車「ミニキャブMiEV」が発売されました。

2014年2月には、フルモデルチェンジを行い、スズキからのOEM供給を受けることになりました。これにより、ガソリン車はスズキからのOEM供給による8代目（バン）/7代目（トラック）と、自社開発・生産のEVバン（6代目）が併売される形となっています。

ミニキャブの歴史（自社生産時代）

初代（1966年-1971年：トラック、1968年-1976年：バン）

1966年5月、トラックモデルが誕生。当初は一方開きと三方開きの2種類がありました。1968年にはバンモデルが追加され、トラックとは異なるテールランプが採用されました。1969年にはエンジンの出力向上、1971年にはバンのマイナーチェンジが行われ、エンジンや名称が変更されました。

2代目（1971年-1972年：EL、1972年-1976年：W）

1971年5月、トラックがフルモデルチェンジ。バンは先代モデルを継続販売し、名称を「ミニキャブEL」に変更しました。1972年9月にはマイナーチェンジを行い、エンジンを水冷式に変更し、「ミニキャブW」と改名しました。ヘッドランプが丸型から角型に変更され、ヒーターやクーラーが装備されました。

3代目（1976年-1977年：500cc、1977年-1984年：550cc）

1976年5月、フルモデルチェンジを行い、エンジンを4サイクルに変更し、「ミニキャブ5（ファイブ）」と改名しました。バンのテールランプやドアの形状が変更されています。1977年5月には大規模なマイナーチェンジを行い、ボディサイズを拡大し、「ミニキャブ・ワイド55」となりました。1981年には名称が「ミニキャブ」に戻り、上級仕様の「エステート」が追加されました。1982年には4WDモデルが追加されました。

3代目 海外輸出仕様（1977年-1986年）

3代目ミニキャブは、「Mitsubishi L100」として海外に輸出されました。インドネシア、チリ、アルゼンチンなどに輸出され、その後インドネシアで生産されました。

4代目（1984年-1990年：550cc、1990年-1991年：660cc）

1984年6月、フルモデルチェンジ。「うちのデッ軽（けい）くん」というキャッチコピーで、キャビンや荷台が拡大しました。エアコンがオプション設定され、サスペンションやステアリング形式も変更されました。1987年にはエンジンが3気筒に変更され、スーパーチャージャー搭載車も追加されました。1990年には規格改正でエンジンが660ccに拡大しました。

5代目（1991年-1999年）

1991年2月、フルモデルチェンジ。3気筒エンジンを全車に搭載し、テールランプのデザインがトラックとバンで共通化されました。1994年のマイナーチェンジでヘッドランプが角型2灯式に、1996年のマイナーチェンジで異形レンズのハロゲンバルブ式に変更されました。

6代目（1999年-2014年：ガソリン車、2011年-2023年：MiEV/EV）

1999年2月、フルモデルチェンジ。前軸を前進させた形状になり、4ATがラインナップされました。テールランプの形状も変更され、乗用グレードのタウンボックスが登場しました。2003年からは日産自動車へOEM供給が開始されました。2011年には、電気自動車「ミニキャブMiEV」が発売されました。2023年には、大幅改良モデルであるミニキャブEVが発表されました。

ミニキャブ・ミーブ

i-MiEVの技術を活用した電気自動車で、2011年12月に販売を開始しました。バッテリー容量が異なる2種類のモデルが用意され、2012年にはトラックモデルも発売されました。2023年現在も販売されており、脱炭素化の取り組みを加速する物流業界や自治体などで導入されています。

ミニキャブEV

2023年11月、「ミニキャブ・ミーブ」をベースに大幅改良を行い、車名を「ミニキャブEV」に変更した電気自動車です。EVシステムが新世代化され、航続距離が向上したほか、安全装備も充実しました。また、アクセサリーコンセントや充電用USBポートもオプション設定されました。

特装車

ミニキャブには、他社に対抗するためにさまざまな特装車が用意されています。リアサスが縮む装置やクローラー仕様、ダブルキャブやスーパーキャブなど、さまざまなニーズに対応したモデルが存在しました。

スズキOEM以降

2014年以降は、スズキからエブリイ・キャリイのOEM供給を受けて販売されています。これにより、ミニキャブはスズキ、マツダ、日産との4兄弟車種となりました。OEM供給以降は、ベースとなる車種と同一の設計となっています。

バン（ガソリン車）

7代目（2014年-2015年）

2014年2月、フルモデルチェンジ。荷室の拡大や使い勝手の向上が図られました。エンジンはDOHC化され、燃費も向上しました。ただし、販売期間は1年1ヶ月と短命でした。

8代目（2015年-現在）

2015年3月、フルモデルチェンジ。エンジンがR06A型に変更され、オートメイテッドマニュアルトランスミッション（AMT）が搭載されました。安全装備も充実し、「e-Assist」が搭載されました。その後も改良が続けられ、2024年には初のCVTモデルが登場しました。

トラック

7代目（2014年-現在）

2014年2月、フルモデルチェンジ。荷台の拡大や使い勝手の向上が図られました。エンジンはバンと同様にDOHC化され、燃費も向上しました。その後も改良が続けられ、安全装備や機能が充実しています。

中華汽車 OEM

威利（1989年-2007年）

台湾の中華汽車（CMC）では、4代目ミニキャブをベースにホイールベースを延長した「中華威利（CMC Varica）」が製造されました。エンジンも大型化され、独自の進化を遂げました。

菱利（2000年-現在）

現在は6代目をベースに、さらに改良された「菱利」が販売されています。エンジンやデザインが変更され、2023年にはバッテリー容量が改良された電気自動車版のe-Verycaが登場しました。

J-space (2024年-現在)

2024年には菱利の後継機であるJ-spaceが発売されました。

車名の由来

「ミニキャブ」という名前は、小さな車体に広い荷台を持つキャブオーバーという意味で名付けられました。イギリスでは「minicab」はタクシーキャブを指します。

脚注、注釈、出典、関連項目、外部リンク

これらの詳細については、提供された資料の各項目をご参照ください。

ミニキャブは、55年以上の歴史の中で、日本の物流を支え続けてきました。今後も、その進化から目が離せません。

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