三菱・360

三菱・360について

三菱・360は、1961年に新三菱重工業（現在の三菱自動車工業）から登場した、同社初の4輪商用軽自動車です。この車両は、倉敷の水島製作所で製造されており、過去に製造されていたオート三輪の技術を活かして開発されています。1946年以来続いてきた三菱・みずしま系のオート三輪と、1959年に販売された軽オート三輪の三菱・レオの経験を基にした軽ボンネットバンとして、その位置づけが明確です。

このモデルのデザインは金子徳次郎の手によるもので、機能性を重視したシンプルなスタイリングが特徴です。フロントエンジン、リアドライブという一般的な構造を備え、フロントには横置きリーフ独立式のスプリング、リアには半楕円リーフリジッドを採用しています。これにより耐久性が高く、保守的な設計が実現されています。

エンジンはME21型の2ストローク直列2気筒で、359ccの排気量を持ちます。出力は17馬力を誇り、4速のコラム式マニュアルトランスミッションと組み合わさることで、当時の道路事情においても十分な性能を発揮しました。最高速度は80km/hまで達することができ、基本的な動力性能を確保しています。

また、三菱・360は広い荷室の設計がセールスポイントとして評価され、バックドアにはスタンダードの横開きとデラックスの上下開きという選択肢がありました。後部座席を倒すことで広大な空間が生まれ、ゴルフバッグを2個積むことも可能となります。このような利便性が、多くのユーザーを惹きつけました。

営業面においても、三菱・360は商業的に大成功を収め、車体後部を改造することで4座の軽乗用車「ミニカ」へと進化しました。この成功は、新三菱水島製作所がオート三輪事業を終了し、4輪車両に全力を注ぐ方針の転換を促す契機となりました。

歴史

• - 1960年: 第7回東京モーターショーでプロトタイプを出展。
• - 1961年4月: パネルバン（LT20）、ライトバン（LT21）が発売。
• - 1961年10月: トラック（LT22）を追加。
• - 1962年4月: ライトバンにデラックス（LT21D）を追加し、様々な装備が加わる。
• - 1962年: 車台を流用して初代三菱・ミニカが登場。
• - 1964年頃: エンジンがME24型となり、出力が18馬力に向上。
• - 1966年: 車台を元にした初代三菱・ミニキャブを発売。
• - 1967年頃: マイナーチェンジが行われ、出力が21馬力に向上。
• - 1969年7月: ミニカがフルモデルチェンジされ、ライトバンも新たな形に。
• - 1972年9月: ピックアップが生産終了。
• - 1973年3月: 残っていたピックアップがミニキャブトラックと統合され、三菱・360の歴史が幕を下ろしました。

このモデルが与えた影響は非常に大きく、現代の軽自動車の礎となるような構造やデザイン理念が、この三菱・360にあったことは間違いありません。

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