三輪高市麻呂

三輪高市麻呂（みわのたけちまろ）

三輪高市麻呂は、飛鳥時代に活躍した人物で、三輪氏の一族です。氏は大三輪、大神とも表記されます。姓は君から朝臣へと変わりました。父は文屋君です。

壬申の乱での活躍

天武天皇元年（672年）の壬申の乱において、高市麻呂は大海人皇子（後の天武天皇）側につき、重要な役割を果たしました。特に箸陵と中つ道の戦いでは、その勇猛果敢な働きによって大海人皇子側の勝利に大きく貢献しました。

乱の勃発時、高市麻呂は朝廷での官職を持たず、大和国で情勢を静観していたとされます。しかし、大伴吹負が倭京を襲撃し、大友皇子側の軍の指揮権を奪取すると、高市麻呂は吹負の下で戦うことを決意します。犬養五十君率いる敵軍との戦いでは、置始菟と共に右翼を率い、箸陵での戦いで敵を破り、中つ道では廬井鯨の軍を打ち破るという戦功を挙げました。

天武・持統・文武天皇への仕え

壬申の乱後、高市麻呂は天武天皇に仕え、その才能を発揮しました。天武天皇13年（684年）には、大三輪君らと共に朝臣の姓を授けられます。朱鳥元年（686年）の天武天皇の葬儀では、直大肆として誄を行いました。

持統天皇の時代には、中納言直大弐として、天皇の伊勢国行幸を諫めるという直言を行いました。農事を妨げるとして行幸の中止を求めたのです。天皇はこれを聞き入れませんでしたが、高市麻呂の国を思う心がうかがえるエピソードです。

文武天皇の時代にも引き続き朝廷に仕え、大宝2年（702年）には従四位上・長門守に任じられ、大宝3年（703年）には左京大夫となりました。

死後

慶雲3年（706年）2月6日、左京大夫従四位上として亡くなりました。その功績を称えられ、死後、壬申の乱における功により従三位を贈られました。

人物

『懐風藻』には「五言従駕応詔一首」の詩が、『万葉集』・『歌経標式』には作歌が残されています。

高市麻呂は、武人としての才能だけでなく、文化的な素養も持ち合わせていた人物であったことが伺えます。

系譜

父：三輪利金
母：高市連安人の女
妻：大津連の女
男子：大神忍人 - 子孫は大神神社社家
* 男子：大神興志 - 子孫は三輪若宮神官

高市麻呂の子孫は大神神社の社家となり、室町時代以降高宮家を称して、代々大神神社の神主を務めました。

三輪高市麻呂は、壬申の乱での活躍、天皇への諫言、文化的な才能など、多岐にわたる側面を持つ人物でした。その生涯は、飛鳥時代の激動期を生き抜いた一人の貴族の姿を鮮やかに映し出しています。

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