上ビルマ

上ビルマ

「上ビルマ（Upper Burma）」は、ミャンマー連邦共和国の特定地域を指す名称です。この地域は、国土を縦断するエーヤワディー川の上流域に広がる平野部を主に含みます。

地理

上ビルマという呼称は、元来、エーヤワディー川下流域を指す「下ビルマ」とともに、地理的な区分として使われており、厳密な境界線が設定されていたわけではありませんでした。しかし、歴史的な経緯の中でその意味合いは変化します。19世紀にイギリスがビルマへの影響力を強め、第二次英緬戦争後の1852年にエーヤワディー川下流域の平野部、すなわち下ビルマがイギリスに割譲されると、上ビルマはビルマ王朝の領土とイギリス植民地との間に引かれた明確な境界を持つ地域として認識されるようになりました。

上ビルマの中央部に位置するマンダレー盆地には、いくつかの塩湖が点在しています。この地域の土壌は一般的に砂質で軽く、肥沃度はさほど高くありませんが、多様な性質を持っています。土壌や気候に適応して、棘が少ない低木が多く生育しています。

気候区分としてはサバナ気候に属し、エーヤワディー川やその支流域では、古くから灌漑を利用した水田耕作が盛んに行われてきました。特に、乾季になって河川の水位が下がると、川沿いに現れる沖積地や中州（地元ではカインやカインチュンと呼ばれる）が貴重な農地として利用されます。ここでは、タマネギ、トウガラシ、タバコ、マメ類などが栽培されています。伝統的にこの地域で栽培されてきた作物にはアワ、マメ類、ゴマなどがありましたが、イギリス植民地時代に入ってからは、綿花、サトウキビ、ラッカセイといった商品作物の栽培も導入され、農業の景観に変化をもたらしました。

歴史

上ビルマは、ビルマ族の王朝が興隆した歴史的に極めて重要な地域です。ビルマ族によって最初に築かれた王朝であるパガン王朝は、この地に都を定めました。その後も、アヴァ王朝をはじめとする多くの国家が上ビルマを政治的な拠点としました。

1852年の第二次英緬戦争の後、当時のビルマを統治していたコンバウン王朝は、エーヤワディー川の下流域に位置する平地部、すなわち下ビルマをイギリスに割譲することを余儀なくされました。さらに1885年の第三次英緬戦争により、ビルマ全土がイギリスの植民地支配下に置かれることになります。この植民地化の結果、政治、社会、経済の中心機能は、伝統的な上ビルマから、港湾都市として発展した下ビルマのヤンゴン（当時のラングーン）へと大きく移されました。

しかし、政治・経済の中心が移された後も、多くの人々にとって、上ビルマは伝統的なビルマ文化の精神性、いわゆる「ミャンマー・フム」が色濃く残る、国の魂が宿る場所と見なされています。特に、最後のビルマ族王朝であったコンバウン王朝の首都が置かれていたマンダレーは、現在でも上ビルマ地域における文化的な中心であるとともに、経済的な核としての役割も担っています。

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