上方柳次・柳太

上方柳次・柳太（かみがた りゅうじ・りゅうた）は、日本の昭和時代に舞台で活躍した漫才コンビである。同時期に人気を集めた若井はんじ・けんじ、通称「はんけん」と並び、「柳柳」の愛称で親しまれた彼らは、軽妙な掛け合いと個性的なキャラクターで大衆の支持を得た。

メンバー

ボケ担当の上方柳太は、本名を福井靖益といい、1930年に三重県伊賀上野に生まれた。額が広かったことから「デボチンの柳太」という愛称で知られ、ユーモラスなボケで観客を沸かせた。彼は、劇団員であった実兄を頼って三遊亭柳枝が率いる柳枝劇団に入団し、河合金児の名で活動した。柳太は1979年3月24日、肺がんのためこの世を去った。

一方、ツッコミ担当の上方柳次は、本名を沢田敏治と称し、1931年4月28日に誕生した。徳島県出身（大阪市東横堀生まれという説もある）で、喜劇界の名優である二代目博多淡海に師事した後、柳枝劇団に入団して沢田二郎として活動していた。柳次は相方である柳太に先立たれた後も、新たな相方と組んで長年にわたり舞台に立ち続け、1999年10月10日に肝硬変で亡くなった（享年68）。

コンビ結成と活動

二人の出会いは柳枝劇団である。当初、柳太は実兄とのコンビ結成を試みるも実現に至らなかった。しかし、柳太の兄が地方巡業で不在の間、柳次が柳太に声をかけ、意気投合してコンビを結成する運びとなった。1957年（昭和32年）、京都の富貴席で正式に漫才師としてデビュー。その後、新花月や神戸松竹座などを主な活動拠点とした。

テレビ番組『お笑い三人組』の人気に対抗するため、神戸松竹座では初代森乃福郎とともに「大阪爆笑三人組」という喜劇公演を行い、好評を博した。

柳太没後の柳次の活動

柳太の急逝後、柳次は漫才師としての活動を止めなかった。1979年8月からは、かつて人気を二分した若井はんじ・けんじのけんじと一時的にコンビを組んだが、けんじの東大阪市会議員選挙出馬により短期間で解散。そして1981年からは、自身の妻である上方一枝と新たなコンビを結成し、舞台に復帰した。上方一枝は1928年11月1日生まれで東京都出身。あした順子・ひろしの順子の姉であり、戦前には玉川スミと共に音曲漫才で活躍した経験を持つベテランだった。柳次と一枝のコンビは、道頓堀角座や浪花座といった主要な劇場に出演を続け、1998年頃まで精力的に舞台に立ち、多くのファンを楽しませた。当時の所属事務所は松竹芸能であった。

功績と影響

上方柳次・柳太は、その実力が正当に評価された。1976年には第11回上方漫才大賞の奨励賞を受賞し、その活躍が称えられた。さらに没後となる2012年には、上方演芸界への長年の貢献が認められ、第16回上方演芸の殿堂入りを果たしている。

彼らの芸は後進にも影響を与えた。弟子には上方よしおや、後に中田アップ門下に移籍した中田カウスがいる。また、柳次のギャグ「いやぁ～、会いたかったよォ～」は、オール阪神・巨人のオール阪神に受け継がれ、現在でも耳にすることがある。その他にも、「よう来たなぁ」や「そんなこと言いなや、今さら」、「しゃぁさかい、まかせなさ～い」、「びびんちょ」、「～しゃんな」といった独特の言い回しやギャグで観客を笑わせた。

その他の活動

漫才舞台以外にも、彼らは多方面で活動を展開した。東芝レコードから「当代サラリーマン節／まってて小唄」というレコードをリリースし、歌声も披露している。また、映画『吹けば飛ぶよな男だが』（1968年）に出演したほか、『演芸まんがショー』（1967年）や『おはこ寄席』（1968年）といった演芸番組にも出演し、テレビを通じて全国にその芸を届けた。

さらに、テレビドラマにも出演経験があり、特に柳太は『素浪人 月影兵庫』第2シリーズの1エピソードに出演するなど、俳優としても活動の一端を見せた。その他、『道頓堀』（1968年）、『野次馬がいく』第24話（1968年）、『すいーとぽてと』第4話（1971年）といったドラマにも出演している。

上方柳次・柳太は、昭和の上方漫才を彩った重要なコンビの一つである。個性的なキャラクターと確かな実力で、寄席やテレビ、ラジオなど様々なメディアで活躍し、大衆芸能の発展に貢献した。彼らの残した足跡は、上方演芸史において今なお語り継がれている。

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