上杉景虎

上杉景虎：御館の乱で散った悲劇の武将

上杉景虎（うえすぎ かげとら）は、戦国時代から安土桃山時代にかけての武将です。後北条氏の北条氏康の七男として生まれ、幼名は北条三郎とされていました。後に上杉謙信の養子となり、「景虎」の名を与えられます。

生涯

北条氏時代

幼少期は箱根の早雲寺に預けられ、僧として過ごしたと伝えられています。当時の戦国大名である後北条氏、武田氏、今川氏の間で三国同盟が成立し、甲相同盟の一環として、景虎は武田家に人質として送られたという説があります。しかし、確実な資料では確認されておらず、近年では否定的な見解が強まっています。

永禄12年（1569年）、大叔父にあたる北条幻庵の養子となり、その娘を妻としました。小机衆を束ね、江戸城の武蔵遠山氏とも親交があったとされています。

三郎から景虎へ

永禄12年（1569年）、武田氏の駿河侵攻により、後北条氏は甲相同盟を破棄し、越後上杉氏との越相同盟を締結しました。この同盟に基づき、上杉謙信の養子として迎えられることになったのが、北条三郎、後の上杉景虎です。

当初、北条氏政は自分の子を養子に出すことを拒んだため、代わりに三郎が養子に選ばれました。永禄13年（1570年）、謙信と面会し、彼の姪（上杉景勝の姉）を妻として迎え、正式に養子となり、謙信の初名である「景虎」を与えられました。

家督争い：御館の乱

天正6年（1578年）3月、上杉謙信が急死すると、景虎は義兄弟である上杉景勝と家督を巡って対立し、御館の乱と呼ばれる内乱が勃発します。

景虎は、上杉景信、本庄秀綱、北条高広らの支持を受け、実家の後北条氏と同盟国の武田氏の支援を受けましたが、景勝側は春日山城をいち早く制圧しました。景虎は御館に立て籠もり抵抗を続けましたが、武田氏が景勝との和睦に応じたため、孤立してしまいます。

天正7年（1579年）、御館は落城し、景虎の正室は自害しました。景虎自身は実家の後北条氏を頼って小田原へ逃れようとしましたが、鮫ヶ尾城主の裏切りにあい、自害しました。享年26歳。

御館の乱は景勝の勝利に終わり、景虎の敗北は武田家と後北条家の甲相同盟を崩壊させる要因となりました。

近年の研究

近年では、謙信が景虎を後継者として考えていたとする説や、景勝との家督分権を考えていたとする説など、さまざまな議論がなされています。また、「北条氏秀」と「上杉景虎」は別人であるという説が有力になっています。

上杉景虎を題材とする作品

上杉景虎は、小説や漫画など、多くの作品で取り上げられています。

小説：『炎の蜃気楼』、『上杉三郎景虎』など
漫画：『望楼　－北条三郎の野望－』

上杉景虎の生涯は、戦国時代の複雑な人間関係と権力闘争を象徴する出来事として、今もなお多くの人々の関心を集めています。

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