上杉義枝

上杉義枝

江戸時代中期に活躍した高家旗本の一人、上杉義枝（うえすぎ よしえだ）は、短い生涯ながらも武家社会の慣習と定められた道を歩みました。義枝は、享保五年（1720年）に伊予国吉田藩の第三代藩主として知られる伊達村豊公の三男として生を受けました。その母は滝氏と伝えられています。父である伊達村豊公自身も、伊達政宗の嫡男である伊達秀宗を祖とする家系の出身であり、義枝は由緒ある血筋に連なる人物でした。

幼少期を経て、義枝は高家上杉家の当主であった上杉知義氏の婿養子として迎え入れられました。これは当時の武家社会における家督相続の一つの形態であり、後継者のいない家が他の家から有能な人物や血縁者などを養子として迎えることで、家名を存続させるための重要な手段でした。上杉家もまた、江戸幕府における高家という特別な地位にあり、その存続と安定が求められていました。知義氏の長女を正室に迎えることで、義枝は上杉家の正式な後継者としての地位を確立したのです。

幕府への出仕は、享保十七年（1732年）三月二十八日に叶いました。この日、義枝は江戸幕府第八代将軍である徳川吉宗公に初めて拝謁する儀式、いわゆる御目見を果たしました。この時、義枝は数え年で十三歳でした。御目見は、旗本や大名などの幕臣が将軍に初めて対面する重要な儀式であり、これにより正式な家臣として認められる第一歩を踏み出すことになります。

成人後、寛保元年（1741年）七月二十日、養父である上杉知義氏が隠居したことに伴い、義枝は上杉高家家の家督を正式に相続しました。これをもって、義枝は幕府の職制において表高家の一員として列せられることとなりました。高家は、主に朝廷との儀礼や幕府の重要な儀式、将軍名代としての任務などを担う特別な役職であり、その中でも表高家は通常の政務には直接関わらず、儀礼典礼を専門とする家柄でした。しかし、義枝は家督を相続してから死去するまでの短い期間において、実際に高家職に任じられて幕府の役務に就く機会はありませんでした。

家督を継いでからわずか一年余り後のことでした。寛保二年（1742年）九月十一日、上杉義枝は惜しくもこの世を去りました。享年二十三歳という、あまりにも短い生涯でした。家督相続や御目見といった重要な節目を経て、これからという時期での早すぎる死は、上杉家にとっても大きな出来事であったと思われます。

義枝の死後、上杉高家家の家督は、その長男である上杉義寿氏が継承しました。義寿氏は義枝が死去した年である寛保二年（1742年）に生まれており、父の跡を幼くして継ぐことになりました。

上杉義枝の生涯は、伊予吉田藩主の子として生まれ、高家上杉家の養子となり、幕府への出仕を果たし、家督を相続して表高家の一員となったものの、高家職に就くことなく若くして世を去ったというものでした。短いながらも、江戸時代の武家社会における家柄や儀礼といった側面を垣間見ることができる人物と言えるでしょう。父伊達村豊公（1682年 - 1737年）、養父上杉知義氏（1699年 - 1752年）といった面々との関係性の中で、その人生が形作られました。正室は養父知義氏の長女であり、後を継いだ長男義寿氏（1742年 - 1784年）によって上杉家の血脈は受け継がれていったのです。

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