上林猷夫

上林猷夫（かんばやし みちお）は、1914年2月21日に生まれ、2001年9月10日にその生涯を終えた、日本の詩人です。北海道札幌市で生まれた彼は、旧姓を高垣といいましたが、生後わずか6ヶ月で伯父の養子となりました。養父が大蔵省専売局の官吏であったため、一家は転勤が多く、上林は幼い頃から日本各地を転々としながら育ちました。

京都にある同志社高等商業学校を卒業後、大阪地方専売局に勤務しました。その後、高砂香料工業株式会社に入社し、やがて取締役総務部長に就任するなど、実業家としても成功を収めました。会社での要職を務める傍ら、彼は詩作への情熱を持ち続けました。

詩人としての活動は、1936年に本格化します。池田克己や佐川英三らと共に詩誌『豚』を創刊し、詩壇での第一歩を踏み出しました。第二次世界大戦後も精力的に活動を続け、詩誌『花』を新たに創刊したほか、前衛的な詩の潮流であった『日本未来派』のメンバーとしても名を連ねました。

彼の詩人としての評価を決定づけたのは、1952年に上梓した詩集『都市幻想』です。この作品により、彼は第3回H氏賞を受賞しました。この受賞は、上林の詩が同時代の詩壇において高く評価されたことを示しています。

詩作のみならず、上林は日本の現代詩壇の運営にも深く関与しました。特に、日本現代詩人会においては重要な役割を果たしました。1963年からは理事長として、その卓越した事務処理能力と組織運営の手腕を発揮し、会の活動を支えました。さらに、1987年には同会の会長に就任し、長きにわたり日本の現代詩の振興と発展に尽力しました。

上林猷夫は数多くの著作を残しています。初期の詩集には『音楽に就て』（1942年）、『機械と女』（1956年）などがあります。その後も『上林猷夫全詩集』（1976年）が刊行され、彼の詩業の集大成となりました。晩年にも『遺跡になる町』（1982年）、『子供と花』（1986年）といった詩集を発表しており、1995年には代表作が思潮社の現代詩文庫に収められるなど、その作品は広く読まれ続けています。詩集以外にも、詩人・高見順の生涯と作品を論じた『詩人高見順 その生と死』（1991年）といった評論も著しています。

また、他者の作品の編纂にも携わりました。奈良幸次郎との共編で中村良明遺作集『童女』（1941年）を手掛け、さらに『丸山薫詩集』（1968年）の編纂も行っています。

このように、上林猷夫は実業界で要職を務める一方で、優れた詩人として数々の作品を生み出し、さらには日本現代詩人会における組織運営の中心人物として詩壇に貢献するなど、多岐にわたる活動を展開した人物でした。

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