上林苑

上林苑の概要

上林苑（じょうりんえん）は、古代中国に存在した大規模な庭園で、主に秦と前漢の皇帝のために設けられました。その敷地は咸陽と長安の南側に広がっており、皇帝たちの遊猟やレクリエーションの場として利用されていました。

歴史的背景

上林苑の起源は秦の時代にまでさかのぼりますが、本格的に拡張されたのは前漢の武帝の治世に入ってからです。武帝は紀元前138年、彼自身の遊猟の好みに応じて上林苑を広げることを決定しました。この際、彼は吾丘寿王に指示して、庭園の拡張に必要な費用を詳細に計算させました。その結果として、周囲300里（約1,200キロメートル）にわたる壮大な庭園が完成したのです。

複雑な構造

上林苑は70以上の離宮を有し、各離宮は馬車1,000台や騎馬1万人を収容できる大きさを誇っていました。この庭園には様々な種類の獣が飼育され、皇帝は主に秋と冬に狩りを楽しむためにここを訪れました。武帝がさらに上林苑を拡張する際、群臣に命じて全国から珍しい植物や果樹を持ち寄らせ、これらも庭園内で栽培されました。

豪壮な庭園の発展

茂陵の富豪、袁広漢はまた別の豪華な庭園を建設しており、そこには珍しい動物や植物が集められていました。彼はさらには人工的に砂浜や激流を作り、すべての建物を廊下で繋げる設計をしましたが、後に彼が罪に問われて処罰されたことで、これらの動植物が上林苑に移され、さらに庭園の魅力が増しました。

上林苑の管理体制

上林苑には、その動植物の種類や数量を管理するための役人が配置されていました。具体的には、上林令や上林尉などの官職が設けられ、庭園内の情報をきちんと記録する役割を担っていました。加えて、庭園には6つの池と10以上の宮殿も存在しました。

水衡都尉の設置

武帝元鼎2年（紀元前115年）、庭園の管理を専任する水衡都尉が設置されました。上林令や上林尉はこの新しい官職の所属とされ、庭園の運営をさらに効率化しました。また、民間での通貨鋳造が禁止された結果、銭の鋳造は水衡都尉の属官である均輸、鍾官、弁銅の三官によって独占されることとなりました。これが「上林三官」として知られています。

後漢時代の変遷

後漢時代において、都が洛陽に移ったため、前漢時代の上林苑は実質的に放置されることとなり、洛陽の西方に新たに上林苑が設けられることになりました。これにより、古代の豪華な庭園は次第にその歴史の中に埋もれていくこととなるのです。

上林苑は、その壮大なスケールと多様な植生・動物群によって、古代中国の庭園文化を代表する存在となりました。

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