水衡都尉

水衡都尉（すいこうとい）

水衡都尉は、古代中国の前漢時代に存在した官職です。

概要

水衡都尉は、前漢の武帝の元鼎2年（紀元前115年）に初めて設置されました。官位は二千石とされ（『漢書』百官公卿表上）、皇帝が所有する広大な山沢である上林苑（じょうりんえん）の管理を主な職務としていました。しかし、その職掌は上林苑の管理に留まらず、多岐にわたっていました。例えば、貨幣である五銖銭（ごしゅせん）の鋳造も水衡都尉の重要な職務の一つでした。

属官

水衡都尉の下には、様々な属官が配置されていました。これらの属官は、それぞれの専門分野を担当し、水衡都尉の職務を補佐していました。主な属官は以下の通りです。

上林令
上林丞（8名）
上林尉（12名）
均輸令
均輸丞（4名）
御羞令
御羞丞（2名）
禁圃令
禁圃丞
禁圃尉（2名）
楫櫂令
楫櫂丞
鍾官令
鍾官丞
技巧令
技巧丞
六厩令
六厩丞
弁銅令
弁銅丞
衡官長
衡官丞
水司空長
水司空丞
都水長
都水丞（3名）
農長
農丞
倉長
倉丞
甘泉上林長
甘泉上林丞（4名）
甘泉都水長
甘泉都水丞

（注：農令と倉令はあわせて農倉令とする説もあります。）

これらの属官の中でも、上林令、上林丞、上林尉は上林苑の管理に直接関わる役職であり、均輸令、均輸丞は物資の輸送や価格の調整を担当していたと考えられます。また、技巧令、技巧丞は技術的な事項を、六厩令、六厩丞は皇帝の所有する馬の管理を行っていたと考えられます。

廃止とその後

水衡都尉は、時代とともに変遷を辿りました。成帝の時代には、技巧と六厩が廃止されました。また、王莽（おうもう）が政権を握った新の時代には、水衡都尉は改称され、予虞（よぎょ）と呼ばれるようになりました。後漢時代になると、水衡都尉は完全に廃止され、その職務は少府（しょうふ）という官庁に引き継がれることになりました（『続漢書』百官志）。

水衡都尉は、前漢時代において皇帝の財産管理や経済活動を支える重要な役割を担っていましたが、時代の流れとともにその役割を終えることになったのです。

参考文献

中央研究院・歴史語言研究所「漢籍電子文献資料庫」
班固著、『漢書』
小竹武夫訳『漢書』1から8、筑摩書房、ちくま学芸文庫、1998年。
大庭脩監修、漢書百官公卿表研究会『『漢書』百官公卿表訳注』、朋友書店、2014年。
* （晋）司馬彪著、（梁）劉昭注『続漢書』（『後漢書』所収）百官志三

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