上湧別町

北海道上湧別町：消えた町が残した記憶

北海道紋別郡に位置していた上湧別町は、2009年10月5日、湧別町との合併により、その歴史に幕を閉じました。湧別川が穏やかに流れ、平坦な地形が広がるこの町は、かつて網走管内中部の静かな暮らしを支えていました。町名は、旧湧別村から分村した際に、湧別川の上流側に位置していたことに由来しています。北海道で最後に消滅した自治体として、その歴史と文化は今なお人々の記憶に刻まれています。

屯田兵と開拓の歴史

上湧別町の歴史は、屯田兵の入植に始まります。現在も「兵村」という地名が残っているように、開拓期の苦労と努力が町の礎を築きました。明治43年（1910年）、旧湧別村から二級町村制を施行して分村、上湧別村として誕生しました。大正8年（1919年）には遠軽村（現遠軽町）が分村し、昭和13年（1938年）には一級町村制に移行。昭和38年（1953年）には町制を施行し、上湧別町となりました。

自然と産業

湧別川は町の生命線であり、豊かな水資源を提供してきました。平坦な地形を生かした畑作と酪農が基幹産業として発展し、特にリンゴ栽培は日本最北の産地として知られていました。自然豊かな環境は、住民の生活を支え、同時に美しい景観を創造しました。

地域交流と発展

昭和63年（1988年）にはかみゆうべつチューリップ公園が開園、平成14年（2002年）にはかみゆうべつ温泉が開湯するなど、観光面でも発展を遂げました。また、教育にも力を入れており、上湧別中学校は全国的にも珍しい教科教室型として2004年に新築され、地域交流の場としても活用されていました。町民の結束の強さと、地域社会の活気は、上湧別町の大きな魅力でした。

行政と財政

上湧別町の行政は、町長を首長とする町政によって運営されてきました。平成18年度の財政状況を見ると、財政力指数は0.227（北海道市町村平均0.28）と決して恵まれた状況ではありませんでしたが、町民の生活と地域社会の発展のために、さまざまな努力が払われていました。人口一人当たり職員数や人件費は北海道平均を上回っており、住民サービスの充実を目指した姿勢がうかがえます。一方で、地方債残高は高水準であり、財政健全化に向けた課題も抱えていました。

交通と連携

交通面では、かつて名寄本線と湧網線が通っていましたが、現在は廃止されています。名寄本線と湧網線の分岐駅だった中湧別駅は、道の駅として新たな役割を担っていました。バス路線も整備され、近隣自治体とのつながりを維持していました。国道238号、国道242号などの道路も町の交通を支えていました。

国際交流と友好都市

上湧別町は、海外にはカナダ連邦アルバータ州ホワイトコートと姉妹都市提携を結び、国内では北海道新篠津村と友好都市提携を結ぶなど、積極的に交流を進めていました。これらの交流は、町の国際的な視野を広げ、地域活性化に貢献しました。

そして合併へ

上湧別町は、2009年10月5日、湧別町と合併し、新たな湧別町として生まれ変わりました。これは、北海道における市町村合併の最後の事例となり、一つの時代の終焉を告げました。上湧別町は消滅しましたが、その歴史と文化、そして人々の記憶は、新たな湧別町、そして北海道の歴史の中にしっかりと刻まれています。 上湧別町が築き上げた地域社会の礎は、未来へと受け継がれていくことでしょう。

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