中湧別駅

中湧別駅：名寄本線の分岐点、その歴史と現在

中湧別駅は、かつて北海道紋別郡上湧別町（現・湧別町）に位置し、北海道旅客鉄道（JR北海道）名寄本線に属していた駅でした。この駅は、本線と湧別支線が分岐する地点であり、1987年までは湧網線も分岐していたため、鉄道交通の要衝として機能していました。

歴史

中湧別駅は1916年11月21日に、鉄道院湧別軽便線の延伸に伴い開業しました。開業当初から一般駅として機能し、野付牛（現・北見）機関庫の中湧別分庫も設置されました。1919年には、富士製紙が湧別町芭露から駅裏の土場まで馬車鉄道による森林軌道を敷設し、木材輸送に利用しました。1935年には湧網西線が開通し、同線の分岐駅となり、1953年に湧網西線が湧網線に改称された後も、分岐駅としての役割を担いました。1980年まで運行されていた急行「天都」も停車していました。

1982年に貨物、1984年に荷物の取り扱いが廃止され、1987年には湧網線が廃止。国鉄分割民営化によりJR北海道に継承された後、1989年に名寄本線の廃線に伴い、中湧別駅もその歴史に幕を閉じました。

駅名の由来

駅名は所在地名に由来し、湧別川の中流に位置することから「湧別」に「中」を冠したことがその名の起こりです。

駅構造

廃止時点で、中湧別駅は単式ホームと島式ホームを組み合わせた2面3線の地上駅であり、列車交換が可能な構造でした。ホーム間は跨線橋で連絡していました。1983年時点では、駅舎側の1番線が上下共用、島式ホームの2番線が名寄本線下り、外側の3番線が湧網線発着に使用されていました。駅舎は構内の北側に位置し、コンクリート製でした。

廃止後の駅跡

駅の廃止後、旧駅構内は1993年4月1日から「中湧別鉄道資料館」として整備され、その後「道の駅中湧別」としてリニューアルされました。さらに道の駅は「道の駅かみゆうべつ温泉チューリップの湯」として再整備され、鉄道資料館は「上湧別百年記念公園 中湧別駅記念館」として生まれ変わりました。また、「湧別町文化センターTOM」も開設され、地域文化の発信拠点となっています。

上湧別百年記念公園 中湧別駅記念館

駅舎は撤去されましたが、開業当時からの木造跨線橋、レール、ホームが保存・展示されています。除雪用モーターカーや車掌車が静態保存されており、車掌車内にはダイヤグラムやダルマストーブなどの備品が展示されています。また、「文化センターTOM」内にも駅名標や制服、改札鋏などの鉄道関連資料が保存・展示されています。ホームには腕木式信号機が設置され、「国有鉄道 中湧別保線区之碑」という石碑も建立されています。

湧別町文化センターTOM

文化ホール、公民館、図書館、漫画美術館、湧別町役場中湧別出張所などがある複合施設で、鉄道資料館の管理も行っています。「TOM」という名称には、チューリップ、オホーツク、漫画、ミュージアムなどの意味が込められています。

バス路線

かつては北海道北見バスの中湧別案内所が設置されていましたが、2010年に網走バスの路線が廃止されたことに伴い廃止されました。現在、北海道北見バスの乗車券は文化センターTOM内の上湧別町商工会で取り扱っています。2007年から2012年まで、札幌行きの高速バスも乗り入れていました。

隣の駅

廃止時点での隣の駅は以下の通りでした。

名寄本線: 川西駅 - 中湧別駅 - 北湧駅
名寄本線（支線）: 中湧別駅 - 四号線駅
* 湧網線: 中湧別駅 - 五鹿山仮乗降場 - 福島仮乗降場 - 芭露駅

中湧別駅は、その役割を終えた後も、鉄道資料館や道の駅として、地域の歴史と文化を伝える重要な場所として存在し続けています。

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