上田温泉電軌デナ200形電車

上田温泉電軌デナ200形電車

上田温泉電軌デナ200形電車は、1928年に上田交通の前身である上田温泉電軌によって新造された電車です。この車両は、戦後の改番を経てモハ5250形に改称され、その後もずっと別所線で活躍してきました。その独特な外観と、扉脇にある楕円形の戸袋窓から「丸窓電車」として広く愛され、鉄道ファンだけでなく地元住民にとっても親しみのある存在です。

沿革

デナ200形は1928年5月に日本車輌製造で3両（201 - 203）が製造されました。これらの電車は、15メートル級の3扉両運転台を備えており、その半鋼製の丸屋根が特徴的です。当時、日本車輌製造によって製造された類似車両は、高松琴平電気鉄道や一畑電気鉄道などにも在籍していました。特に初期の半鋼製車両であり、床下には木造車両同様にターンバックル付きのトラスバーが取り付けられていました。また、屋上のベンチレーターは独特な形をしていました。

楕円形の戸袋窓は、大正時代の木造電車に見られる形態でありましたが、一般的には戦後早い段階で廃車されるか、角窓型に改造されていました。このような形状を保持していたのは非常に珍しく、名鉄モ510形電車以外にはほとんど存在しなかったため、本形式は貴重な存在となっています。

新造時のデナ200という形式番号は、1943年に上田丸子電鉄が設立された際もそのまま使用され、1950年の一斉改番でモハ5250形5251 - 5253に改められました。また、初期はトロリーポールにより集電していましたが、1945年にはパンタグラフに変更されました。ただし、トラス棒などは最後まで残され、基本的な形状は1500Vの昇圧まで変更されませんでした。このため、昭和初期の雰囲気を保ったまま走り続けていました。

丸窓の形状は、この車両の大きな魅力の一つとなり、別所線のシンボルとして親しまれることとなりました。鉄道友の会が制定したエバーグリーン賞を初めて受賞した車両でもあります。

運用の終了と保存

1986年10月1日、別所線の1500V昇圧前日に運用を終了しました。上田発の最終便は、22時07分に別所温泉駅に到着しました。モハ5251とモハ5252の2両編成が充当されました。最終便運行後、これらの電車は別所温泉駅の留置線に回送され、その後静態保存されました。一方、モハ5253は上田駅に留置され、後に中塩田駅に回送されましたが、2005年に長野計器に引き取られ、復元後に丸窓電車資料館として公開されることになりました。

モハ5251、モハ5252は、最初は別所温泉駅で電車博物館として公開されていましたが、その後はイベント時のみに限定されるようになりました。モハ5252は補修と塗装が行われ、資料館として整備されていますが、モハ5251は解体処分の方針が示されています。しかし、解体前に希望者が現れれば無償で譲渡されるということで、全国から19件の応募があり、最終的に地元のさくら国際高等学校に譲渡され、同校内に保存されることになりました。また、上田市マルチメディア情報センターでは、当時の資料が公開されています。

主要諸元

• - 電気方式: 直流750V
• - 最大寸法: 全長14,719mm × 全高3,785mm × 全幅2,591mm
• - 自重: 32.7t
• - 定員: 100名（うち座席40名）
• - 制御装置: HL単位スイッチ制御方式（間接非自動制御）
• - 主電動機: 形式:三菱MB-98A（出力:75kW × 4）
• - 台車: 日本車輌製造D-16（平鋼リベット組立形釣り合い梁式台車）
• - 制動方式: SME（非常弁付直通空気制動）

上田温泉電軌デナ200形電車は、その独特なデザインと長い歴史を持ちながら、地域の歴史を象徴する存在となっています。

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