上総苅谷藩

上総苅谷藩の歴史

上総苅谷藩（かずさかりやはん）は、江戸時代前期に上総国夷隅郡苅谷（現在の千葉県いすみ市苅谷）を拠点として成立した藩です。1642年に堀氏が1万石の大名として立藩し、1668年には居所が市原郡八幡に移されて上総八幡藩に改称されました。

藩の成立背景

藩主家の祖は堀直政の五男、堀直之であり、彼は江戸幕府に仕官し、書院番や町奉行、寺社奉行などを歴任しました。直之は1633年に江戸町奉行を務めていた際に、上総国夷隅・市原・埴生・長柄4郡内で合計9500石の知行を得て、苅谷に陣屋を築きました。このことが藩の成立の基盤となりました。

直之の長男、堀直景も幕府で重要な役職を務め、寛永19年（1642年）に直之の死去後、家督を継ぎました。直景は大名に列し、1664年には4000石を上総国で得て、さらに越後国などにも領地を拡大しました。

藩の変遷

上総苅谷藩は、寛文8年（1668年）に直景が隠居し、嫡男の直良が家督を継いだ際に居所を八幡に移すことで上総八幡藩となり、苅谷藩は事実上廃藩となりました。直良は同年に国許に入る機会が与えられました。

その後、元禄11年（1698年）には堀家の2代藩主・堀直宥の代で、堀家は関東から越後国へと領土を移して椎谷藩を立藩することとなりました。これにより、上総苅谷藩の歴史は幕を下ろします。

苅谷の地理と文化

苅谷は夷隅川の中流に位置し、その発展は伊甚屯倉の址や中世の伊南荘国吉郷といった古い歴史に根ざしています。苅谷は当初「国吉村」の一部として発展し、江戸時代に入ると「苅谷宿」として商業中心地となりました。特に六斎市は、戦国期の万喜城主土岐氏が設けた市に由来するとの説や、堀直之が居住を開始した頃に始まったという説があります。

六斎市は延宝年間（1673年 - 1681年）に商業がさかんになり、1806年には官許によって制度化されました。このように上総苅谷藩の地域は、ただの藩であるにとどまらず、商業や文化の発展の舞台となりました。

藩の遺構

苅谷陣屋は「南川淵」に位置し、現在のいすみ鉄道いすみ線国吉駅の近くにあたりますが、耕地整理が行われたため、遺構は残っていません。苅谷の陣屋や商業施設がどのように栄えていたかを知ることは難しいですが、地域の人々の歴史に対する誇りや記憶は今も息づいています。

このように上総苅谷藩は、江戸時代において重要な領地として、堀氏の治世のもとで地域の発展に貢献しました。藩の歴史を振り返ることで、当時の政治や文化、経済の把握に役立つことでしょう。

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