伊甚屯倉

伊甚屯倉（いじみのみやけ）

概要

伊甚屯倉は、現在の千葉県夷隅[[郡]]、いすみ市、勝浦市を中心とする地域に存在したとされる屯倉です。この地域は、古代には上総国夷灊郡と呼ばれていました。

歴史

『日本書紀』によると、安閑天皇元年（534年）に、内膳卿の膳臣大麻呂が勅命を受け、伊甚に珠を求めました。伊甚[[国造]]らは、納期に遅れて珠を納めなかったため、大麻呂の怒りを買い、捕らえられて尋問を受けることになりました。国造の稚子直らは、恐れて後宮に逃げ込み、その結果、春日皇后が驚き倒れてしまうという事態を招きました。

この事件の責任を問われた国造たちは、罪を償うために春日皇后に伊甚屯倉を献上することになりました。この献上が、後の上総国の郡の起源になったとされています。

『日本三代実録』には、貞観9年（867年）に節婦として表彰された上総国夷灊郡の春日部直黒主売の名が見えます。このことから、夷灊郡には春日皇后にちなむ春日部という名代が設置されていたと推測され、伊甚屯倉が春日皇后のために設けられたという記述を裏付けるものと考えられています。

また、『日本書紀』には、「分かれて郡となった」と記されていることから、伊甚屯倉の領域は夷隅[[郡]]だけでなく、埴生郡や長柄郡にまで及ぶ広大なものであったと推測されています。

安閑天皇の時代には、三嶋県主の飯粒が竹村の地を献上したり、大河内味張が良田の貢進を渋って田部を出すことになったり、廬城部枳莒喩が娘の罪を購うために屯倉を寄進するなど、屯倉の設置が盛んに行われました。これらの出来事は、大和政権が経済基盤を強化し、地方豪族を統制していく過程で、屯倉が重要な役割を果たしたことを示しています。屯倉の設置に伴い、その地域を統括する官人として、地域の豪族が国造に任命されていきました。

屯倉設置の背景

継体天皇以降、大和政権は経済基盤の拡充と政治権力の強化を推し進めていました。屯倉は、そのための重要な手段の一つであり、地方の有力豪族を組み込みながら、大和政権の支配を強化する上で重要な役割を果たしました。

まとめ

伊甚屯倉は、安閑天皇時代に設置され、春日皇后との深い関わりを持つ屯倉です。その設置は、大和政権の経済的基盤を強化し、政治権力を拡大する上で、大きな役割を果たしました。

脚注

『日本書紀』
『日本三代実録』

参考文献

小笠原長和・監 『千葉県の地名（日本歴史地名大系 12）』 平凡社、1996年、ISBN 4-582-49012-3
坂本太郎・他 『日本書紀（三）(岩波文庫) 』 岩波書店、1994年、ISBN 4-00-300043-9
宇治谷孟・訳 『日本書紀（上）全現代語訳 (講談社学術文庫)』 講談社、1988年、ISBN 4-06-158833-8
加藤謙吉・他 『日本古代史地名事典』 雄山閣、2007年、ISBN 978-4-639-01995-4
平林章仁・著 『蘇我氏と馬飼集団の謎（祥伝社新書）』 祥伝社、2017年、ISBN 978-4-396-11513-5

関連項目

長狭国造：伊甚[[国造]]と同様に、屯倉の設置により勢力が衰えたと考えられています。
武社国造：国造氏族とされる牟邪臣は、春日皇后の外戚である和珥氏の一族にあたります。
名代

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