上雄信内駅

上雄信内駅：険しい地へのアクセスと短い歴史

北海道幌延町字雄興にあった上雄信内駅は、JR北海道宗谷本線に属する駅でした。現在は廃駅となっており、その存在を知る者は少なくなっています。しかし、この駅の誕生と廃止の背景には、地域の地理的特性と交通事情、そして時代の流れが複雑に絡み合っています。

開業までの道のり：タンタシャモナイと困難なアクセス

上雄信内駅周辺は、かつてアイヌ語で「タンタサモナイ（tanta-sam-o-nay）」（今・和人・いる・沢）と呼ばれた地域でした。この地は幌延町の中でも早くから入植が始まった場所の一つですが、外部との交通手段は容易ではありませんでした。当初、住民は天塩川を渡って対岸の天塩町タツネウシへと船で移動する必要がありました。

その後、雄信内駅付近とタンタシャモナイを結ぶ道路が整備されましたが、これが容易な道ではありませんでした。天塩川に急峻な山が突き出す難所であり、道路は山の中腹を削り取る形で建設されたため、しばしば不通になることもありました。戦後の開拓により道路は拡幅されましたが、それでもアクセスは困難なままでした。

こうした状況の中、住民の利便性向上のため、1956年5月1日、糠南仮乗降場と雄信内駅間に上雄信内仮乗降場が開業しました。列車の本数は少なく、廃止直前には普通列車2往復のみの停車でした。

駅としての短い歴史と廃止

1987年4月1日、国鉄分割民営化に伴い、上雄信内駅はJR北海道の駅に昇格しました。しかし、利用客は少なく、1992年度には1日乗降客数が0人となる日もありました。1990年には暴風により乗降所が倒壊するなど、駅としての運営は困難を極めました。そして、2001年7月1日、利用客の減少により上雄信内駅は廃止されました。

駅名の由来は、天塩川の上流側に位置することから「上」を冠したものです。かつての地名「タンタシャモナイ」は、アイヌの人々がこの地をどのように認識していたのかを示す貴重な地名でもあります。

駅の構造と周辺環境

廃止時の上雄信内駅は、単式ホーム1面1線を有する地上駅でした。駅舎はなく、ホーム出入口付近に待合所が設置されていたのみです。ホームは稚内側にスロープがあり、駅施設外と繋がっていましたが、駅と集落の間には歩道も車道も通っておらず、牧場の私有地を通らなければ往来することができませんでした。

駅周辺のアクセス道路である下平橋は老朽化が進んでおり、2017年時点では代替路線の検討が進められていました。これは、上雄信内駅跡地周辺の居住者移転も視野に入れた計画だったようです。

現在では、上雄信内駅の建物や設備はすべて撤去され、跡形も残っていません。かつてこの地に存在した駅は、その短い歴史とともに、地域の地理的条件や交通事情の困難さを物語る存在として、記憶の中にのみ留まっています。

年表

1956年（昭和31年）5月1日：上雄信内仮乗降場開業
1987年（昭和62年）4月1日：上雄信内駅に昇格
1990年（平成2年）3月10日：営業キロ設定、11月9日：暴風で乗降所倒壊
2001年（平成13年）7月1日：駅廃止

隣の駅

JR北海道 宗谷本線
糠南駅 - 上雄信内駅 - 雄信内駅

もう一度検索