下森定

下森定（したもり さだむ）

プロフィール

下森定は、1930年4月27日に島根県鹿足郡日原村（現在の津和野町）で生まれ、2021年10月1日に逝去した日本の法学者です。専門は民法であり、法政大学の名誉[[教授]]、元総長、元理事長を歴任しました。彼の研究は、民法の解釈に新たな視点をもたらし、学界に大きな影響を与えました。

人物

下森定は、詐害行為取消権における責任説、瑕疵担保責任の法的性質に関する法定責任説（修正説）、安全配慮義務等契約責任の再構成などの研究で知られています。彼のゼミからは、高須順一法政大学教授や木納敏和東京高等裁判所部総括判事など、多くの有能な法律家が輩出されました。

学説

下森の学説は、民法上の主要な問題点に対して、通説的な解釈を基盤としつつも、ドイツ法の示唆を取り入れ、独自の修正を加えるという特徴があります。彼は、結論としての妥当性と解釈論としての妥当性との調和を目指しました。

責任説

詐害行為取消権に関する責任説は、ドイツ法からの影響を受けており、中野貞一郎とほぼ同時に日本に紹介されました。しかし、ドイツの訴訟形態が日本では認められないため、責任説は通説とはなっていません。また、詐欺による取消と登記の問題に関しては、従来の復帰的物権変動による解釈を批判的に検証し、94条2項類推適用説を精緻化することに貢献しました。

瑕疵担保責任

瑕疵担保責任の法的性質に関しては、「特定物のドグマ」を批判する有力説が、「不代替的特定物」を前提とするのか「代替的特定物」を前提とするのかが曖昧である点を指摘し、通説である法定責任説を擁護しました。

契約責任の再構成

契約責任の再構成の議論においては、岡孝、辻伸行教授らと共に、ドイツの債務法改正動向を日本に積極的に紹介しました。さらに、詐害行為取消権の性質に関する責任説（特に責任法的無効説）を提唱し、民法解釈を「債務」と「責任」（強制執行を受けうる地位）の2層に分離して解釈するという立場を打ち出しました。この立場は、集合動産の譲渡担保に関する解釈論にも展開されています。

略歴

旧制島根県立津和野中学校4年修了
旧制山口高等学校文科乙類入学
新制山口大学文理学部入学（学制改革に伴う）
1950年：山口大学文理学部中退、広島大学政経学部入学
1954年：広島大学政経学部卒業
1956年：法政大学大学院社会科学研究科私法学専攻修士課程修了
1960年：東京大学大学院社会科学研究科民刑事法専攻博士課程単位取得満期退学
1969年：法政大学教授、法政大学総長・理事長を歴任
2000年：尚美学園大学総合政策学部教授
2004年：成蹊大学法務研究科（法科大学院）教授
1987年〜1992年: 司法試験第二次試験考査委員


法政大学名誉[[教授]]、尚美学園大学名誉[[教授]]の称号を持ちます。

エピソード

法政大学法学部では、長年民法1部（民法概説）を担当しました。民法2部（民法総則と物権法）は須永醇教授、民法3部（債権総論と担保物権法）は安達三季生教授が担当していました。そのため、下森の民法総則や債権総論に関する解釈論が、学部学生向けに講義される機会は限られていました。不定期に開講される「法律学特講」でのみ、彼の解釈論に触れることができました。そのため、著作を通じてではなく講義を通じて彼の解釈論を学び得た法政大学の学生はわずかでした。

著書

『債権法論点ノート』（日本評論社）
『択一式受験六法』（監修）（自由国民社、現在は廃刊）
その他多数

栄典

* 2010年4月：瑞宝中綬章受章

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