下田明宏 (造園家)

日本のランドスケープデザイナー、下田 明宏（しもだ あきひろ）氏は、1955年に東京都文京区で生まれました。都市から自然まで多様な景観を手がける専門家であり、株式会社ディー・エムの代表取締役を務めるとともに、工学院大学建築学部名誉教授として後進の指導にもあたっています。

下田氏は、1979年に東京大学農学部で緑地学を専攻し卒業。さらに学びを深めるため渡米し、1982年にはハーバード大学デザイン大学院にてランドスケープアーキテクチャー修士課程を修了しました。その後、米国ボストンのThe SWA Groupでの実務経験を経て、1988年に自身のデザイン事務所、株式会社ディー・エムを設立。1995年からは代表取締役として、日本のランドスケープデザイン界を牽引してきました。

そのデザイン活動は、極めて幅広い分野に及びます。大規模な国営公園から都市の中心部、住宅地、さらにはリゾートや海外プロジェクトまで、様々なスケールと種類の空間創出に携わってきました。代表的な仕事としては、国営ひたち海浜公園における長期的なデザイン貢献が挙げられます。ここでは西口広場、サンドミュージアムエリア、プレジャーガーデンのリニューアルなどを手がけ、全国都市公園コンクールで関東地方建設局長賞や日本公園緑地協会会長賞を受賞するなど、数々の栄誉に輝いています。

都市再生や駅周辺のランドスケープデザインにおいても重要なプロジェクトを多数手がけています。帯広駅周辺土地区画整理事業では、平成8年度の日本都市計画学会計画設計賞を受賞。特に駅北口広場のアイスカスケードを含むデザインは、その優れた環境デザインが評価され、グッドデザイン賞を獲得しました。同様に、東京メトロ南北線六本木一丁目駅の環境デザインもグッドデザイン賞を受賞しています。また、東京の豊洲や北九州の東田地区といった大規模な都市開発においては、マスタープランやデザインガイドラインの策定に深く関与し、都市における緑と公共空間のあり方を提案しました。札幌市での「緑を感じる街並み形成計画」プロポーザル最優秀賞や、屋上・壁面緑化技術を駆使した「オルトヨコハマ」での国土交通大臣賞受賞も、その多角的なデザイン手法を示す事例です。

公共空間の質の向上にも貢献しており、札幌創成川公園のランドスケープデザインは国土交通大臣賞を受賞。札幌駅前通地下歩行空間もグッドデザイン賞を受賞するなど、都市における市民生活を豊かにする空間づくりで実績を重ねています。

リゾート開発における実績も豊富です。米国カリフォルニア州ナパ郡のKenzo Estateでは、マスタープランだけでなく、COOやPresidentとしてワイナリー経営にも携わるというユニークな経験を持ちます。高級リゾートブランドであるアマンの国内施設、Amanemu（志摩）やAman Kyoto（京都）のランドスケープデザインを担当し、国内外から高い評価を得ています。このほか、中国やフィリピンなど、海外でのプロジェクトにも積極的に取り組んでいます。

実務と並行して、下田氏は長年にわたり教育活動にも情熱を注いできました。早稲田大学や東京大学、日本女子大学での非常勤講師を経て、工学院大学では建築学部まちづくり学科の教授として、多くの学生を指導。現在は同大学の名誉教授です。また、2021年からは特定非営利活動法人アジア・太平洋まちづくり支援機構（APTAC）の会長を務めるなど、アジア太平洋地域におけるまちづくり支援や国際交流にも貢献しています。

著書に『リゾート宣言』があり、自身のデザイン哲学や経験を共有しています。また、「北彩都あさひかわ」に関する学術論文も発表しています。

下田明宏氏は、国内外の多様なプロジェクトを通じて、ランドスケープデザインの可能性を追求し続けています。その実績と貢献は、日本の環境デザイン・まちづくり分野において、重要な足跡を残しています。

もう一度検索