下関市営球場
山口県下関市向洋町に位置していた下関市営球場は、かつて下関運動公園内にあり、プロ野球球団である横浜DeNAベイスターズの源流、大洋ホエールズが誕生した当初に本拠地として使用されたことで歴史にその名を刻んでいます。現在の下関球場（オーヴィジョンスタジアム下関）とは異なる施設です。
この球場は1949年11月、下関に本社を置く大洋漁業（現在のマルハニチロ）が中心となって設立されたプロ野球チーム「まるは球団」の本拠地として建設されました。場所は下関市向洋町の大畠練兵場跡地が選ばれました。建設にかかった総工費2500万円のうち、2000万円は市民からの出資によって賄われたという背景があります。当初、球場の運営は出資者による組合が行う計画でしたが、この試みは早期に立ち行かなくなり、運営が市に移管され、以降「下関市営球場」として運営されることになりました。
まるは球団は1950年に「大洋ホエールズ」と改称し、新たに発足したセントラル・リーグに加盟しました。同年に行われたセ・リーグの記念すべき開幕戦は、当球場と福岡市の平和台野球場で変則ダブルヘッダーとして開催されています。セ・リーグにフランチャイズ制が導入された1952年には、正式に大洋ホエールズの本拠地として使用されました。しかし、下関での主催試合は年間60試合のうち18試合に留まり、そのうち8試合は観客数が1000人にも満たなかったと記録されています。
翌1953年、大洋ホエールズは松竹ロビンスと合併し、「大洋松竹ロビンス」（洋松ロビンス）となりました。この時期は、名目上は当球場と京都市の西京極総合運動公園野球場が「ダブルフランチャイズ」として登録されていましたが、実際には下関での主催試合は激減しました。1953年と1954年の2年間でわずか5試合（1953年に9月6日の読売巨人軍戦ダブルヘッダーの2試合、1954年に4月4日の大阪タイガース戦ダブルヘッダーと4月11日の読売巨人軍戦シングルマッチの計3試合）しか開催されず、照明設備や交通の便、興行面での理由から、主催試合のほとんどは大阪球場で行われるようになりました。
松竹が経営から撤退し、再び大洋ホエールズとなった1955年には、本拠地を神奈川県の川崎球場へと移転しました。しかし、その後も下関では大洋主催のオープン戦や公式戦がしばしば開催されていました。時が経つにつれて施設の老朽化が進み、設備の不備が目立つようになったため、1975年を最後に公式戦は行われなくなりました。
最終的に、老朽化を理由に下関市営球場は1985年をもって廃止され、解体されました。その跡地は、当時移転新築が進められていた下関市立中央病院（現在の下関市立市民病院）の建設用地として利用されることになり、1988年に新しい病院が開院しています。
この球場の歴史には、プロ野球史に残るいくつかのエピソードがあります。
1950年3月10日に行われたセ・リーグ初年度の開幕戦では、平和台球場と下関球場で合計8球団が集まり変則ダブルヘッダーが開催されました。下関には大洋ホエールズ、国鉄スワローズ、中日ドラゴンズ、阪神タイガースが集結し、大洋対国鉄の開幕カードでは大洋の今西錬太郎投手が2-0の完封勝利を飾りました。続く中日対阪神戦でも、中日の清水秀雄投手が阪神打線を二塁すら踏ませない快投で5-0と完封勝利を収めています。翌3月11日の松竹対中日戦では、松竹の岩本義行選手が4回裏に満塁本塁打を放ち、これがセ・リーグにおける記念すべき第1号本塁打となりました。ちなみに、この日岩本選手より早くパ・リーグ第1号本塁打を放った毎日オリオンズの戸倉勝城選手は下関市の出身であり、大洋ホエールズの前身である大洋漁業野球部の出身という縁がありました。
1960年6月29日に開催された大洋対巨人戦のダブルヘッダーは、両試合とも延長12回までもつれ込む熱戦となりました。第1試合は大洋が巨人の守備の乱れに乗じてサヨナラ勝ちを収め、第2試合は桑田武選手が劇的なサヨナラホームランを放ち、大洋が連勝しました。実は、前日の国鉄スワローズ戦もサヨナラ勝利しており、これにより大洋ホエールズはセ・リーグ史上初となる3試合連続サヨナラ勝利という記録を達成しています。この勢いが追い風となり、大洋はこの年、球団創設11年目にして悲願のリーグ初優勝、そして日本一に輝きました。
また、旧下関市営球場では、日米野球も通算7試合開催されています。
1953年 MLBオールスター 対 全パ・リーグ
1955年 ニューヨーク・ヤンキース 対 全日本選抜
1956年 ブルックリン・ドジャース 対 全日本選抜
1958年 セントルイス・カージナルス 対 全日本選抜
1960年 サンフランシスコ・ジャイアンツ 対 全日本選抜
1962年 デトロイト・タイガース 対 大洋ホエールズ
* 1970年 サンフランシスコ・ジャイアンツ 対 大洋ホエールズ
下関市営球場は、短期間ながらプロ野球の本拠地として、そして多くの記憶に残る試合の舞台として、日本の野球史、特に大洋ホエールズの黎明期を語る上で欠かせない存在です。
この球場は1949年11月、下関に本社を置く大洋漁業（現在のマルハニチロ）が中心となって設立されたプロ野球チーム「まるは球団」の本拠地として建設されました。場所は下関市向洋町の大畠練兵場跡地が選ばれました。建設にかかった総工費2500万円のうち、2000万円は市民からの出資によって賄われたという背景があります。当初、球場の運営は出資者による組合が行う計画でしたが、この試みは早期に立ち行かなくなり、運営が市に移管され、以降「下関市営球場」として運営されることになりました。
まるは球団は1950年に「大洋ホエールズ」と改称し、新たに発足したセントラル・リーグに加盟しました。同年に行われたセ・リーグの記念すべき開幕戦は、当球場と福岡市の平和台野球場で変則ダブルヘッダーとして開催されています。セ・リーグにフランチャイズ制が導入された1952年には、正式に大洋ホエールズの本拠地として使用されました。しかし、下関での主催試合は年間60試合のうち18試合に留まり、そのうち8試合は観客数が1000人にも満たなかったと記録されています。
翌1953年、大洋ホエールズは松竹ロビンスと合併し、「大洋松竹ロビンス」（洋松ロビンス）となりました。この時期は、名目上は当球場と京都市の西京極総合運動公園野球場が「ダブルフランチャイズ」として登録されていましたが、実際には下関での主催試合は激減しました。1953年と1954年の2年間でわずか5試合（1953年に9月6日の読売巨人軍戦ダブルヘッダーの2試合、1954年に4月4日の大阪タイガース戦ダブルヘッダーと4月11日の読売巨人軍戦シングルマッチの計3試合）しか開催されず、照明設備や交通の便、興行面での理由から、主催試合のほとんどは大阪球場で行われるようになりました。
松竹が経営から撤退し、再び大洋ホエールズとなった1955年には、本拠地を神奈川県の川崎球場へと移転しました。しかし、その後も下関では大洋主催のオープン戦や公式戦がしばしば開催されていました。時が経つにつれて施設の老朽化が進み、設備の不備が目立つようになったため、1975年を最後に公式戦は行われなくなりました。
最終的に、老朽化を理由に下関市営球場は1985年をもって廃止され、解体されました。その跡地は、当時移転新築が進められていた下関市立中央病院（現在の下関市立市民病院）の建設用地として利用されることになり、1988年に新しい病院が開院しています。
この球場の歴史には、プロ野球史に残るいくつかのエピソードがあります。
1950年3月10日に行われたセ・リーグ初年度の開幕戦では、平和台球場と下関球場で合計8球団が集まり変則ダブルヘッダーが開催されました。下関には大洋ホエールズ、国鉄スワローズ、中日ドラゴンズ、阪神タイガースが集結し、大洋対国鉄の開幕カードでは大洋の今西錬太郎投手が2-0の完封勝利を飾りました。続く中日対阪神戦でも、中日の清水秀雄投手が阪神打線を二塁すら踏ませない快投で5-0と完封勝利を収めています。翌3月11日の松竹対中日戦では、松竹の岩本義行選手が4回裏に満塁本塁打を放ち、これがセ・リーグにおける記念すべき第1号本塁打となりました。ちなみに、この日岩本選手より早くパ・リーグ第1号本塁打を放った毎日オリオンズの戸倉勝城選手は下関市の出身であり、大洋ホエールズの前身である大洋漁業野球部の出身という縁がありました。
1960年6月29日に開催された大洋対巨人戦のダブルヘッダーは、両試合とも延長12回までもつれ込む熱戦となりました。第1試合は大洋が巨人の守備の乱れに乗じてサヨナラ勝ちを収め、第2試合は桑田武選手が劇的なサヨナラホームランを放ち、大洋が連勝しました。実は、前日の国鉄スワローズ戦もサヨナラ勝利しており、これにより大洋ホエールズはセ・リーグ史上初となる3試合連続サヨナラ勝利という記録を達成しています。この勢いが追い風となり、大洋はこの年、球団創設11年目にして悲願のリーグ初優勝、そして日本一に輝きました。
また、旧下関市営球場では、日米野球も通算7試合開催されています。
1953年 MLBオールスター 対 全パ・リーグ
1955年 ニューヨーク・ヤンキース 対 全日本選抜
1956年 ブルックリン・ドジャース 対 全日本選抜
1958年 セントルイス・カージナルス 対 全日本選抜
1960年 サンフランシスコ・ジャイアンツ 対 全日本選抜
1962年 デトロイト・タイガース 対 大洋ホエールズ
* 1970年 サンフランシスコ・ジャイアンツ 対 大洋ホエールズ
下関市営球場は、短期間ながらプロ野球の本拠地として、そして多くの記憶に残る試合の舞台として、日本の野球史、特に大洋ホエールズの黎明期を語る上で欠かせない存在です。
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