不動院 (広島市)

不動院

不動院は、広島県広島市東区にある真言宗の別格本山であり、広島県真言宗教団に所属しています。本尊は薬師如来で、山号は新日山と称します。この寺院は、足利尊氏・直義兄弟が各地に建立した安国寺利生塔の一つであり、安芸国安国寺として知られています。また、全国安国寺会にも加盟しています。

歴史

中世

不動院の開基は行基と伝えられていますが、創建年代や正確な由来については諸説存在します。本尊である薬師如来像の様式から、平安時代には既に創建されていたと考えられています。足利尊氏・直義兄弟によって日本各地に設立された安国寺の一つとして、安芸安国寺は安芸国守護の武田氏の菩提寺として栄えました。

しかし、戦国時代には戦火によって伽藍が焼失し、武田氏も滅亡しました。その後、毛利氏の外交僧であった安国寺恵瓊によって復興されました。関ヶ原の戦いで西軍に加担した恵瓊は処刑され、毛利氏も転封した後、福島正則が芸備両国の大名として入国しました。正則の祈祷僧である宥珍が安国寺に入り、住持となると同時に、宗派を禅宗から真言宗に改め、不動明王を本尊とし、寺院名を不動院と改称しました。後に浅野氏が広島の国主となると、浅野家歴代藩主の庇護を受け、明治時代まで続きました。

近世/現在

第二次世界大戦中、不動院は牛田の住民だけでなく、中国軍管区司令部通信部など様々な機関の疎開先として利用されました。1945年8月6日の広島市への原子爆弾投下では、爆心地から約3.9kmの距離に位置していたため、被爆しました。爆風により金堂の屋根の一部が吹き飛び、本堂の柱が一部折れましたが、建物全体の倒壊は免れました。被爆当日には、市中心部から避難してきた多くの被爆者の受け入れ先となり、境内は負傷者で溢れかえりました。

1958年には、金堂が国宝に指定されました。1993年には、広島市に現存する被爆建物リストにも登録されています。

文化財

国宝

金堂（国宝）: 天井の墨書から天文9年（1540年）の建築と判明しています。屋根は入母屋造、柿葺きで、2階建てのように見えますが、実際には一重裳階付きの構造です。桁行3間、梁間4間の身舎の周囲に裳階を巡らせています。裳階は正面側の奥行1間分を吹き放しとしています。不動院は密教寺院ですが、金堂の建築様式は典型的な禅宗様であり、内部を土間床の一室とする点や、中央を鏡天井とし、周囲に組物が並ぶ天井の構成、桟唐戸、花頭窓、礎盤付き柱、扇垂木等に禅宗仏殿特有の形式が見られます。天井高は8.6メートルに達します。この堂は当初から不動院にあったものではなく、元々は山口市にあったものを移築したものです。移築元の寺院は長年謎とされていましたが、横浜国立大学名誉教授の関口欣也によって、戦国時代末期の天正年間（1573年-1592年）に、当時の住職であった安国寺恵瓊によって山口市の香積寺（現在の瑠璃光寺）から移築されたことが明らかになりました。以前は、禅宗寺院で大内氏の菩提寺であった凌雲寺からの移築とされていました。

1958年（昭和33年）2月8日に国宝に指定されました。原爆による大きな被害を受けずに広島市内に現存する唯一の国宝です。

重要文化財（国指定）

鐘楼: 永享5年（1433年）の建築。1952年（昭和27年）7月19日に指定。
楼門: 文禄3年（1594年）の建築。「楼門」と称していますが、建築形式的には「二重門」です。1958年（昭和33年）5月14日に指定。
木造薬師如来坐像: 檜材寄木造、平安時代後期。
銅製梵鐘: 高麗時代。1899年（明治32年）8月1日に指定。

交通

広島高速交通広島新交通1号線（アストラムライン）不動院前駅より徒歩2分

脚注

参考文献

『週刊朝日百科 日本の国宝 29』、朝日新聞社、1997

関連項目

国宝一覧
日本の寺院一覧

外部リンク

真言宗別格本山安国寺不動院
不動院 広島市公式HP
不動院金堂-広島の文化財 広島県教育委員会HP
ヒロシマをさがそう - ウェイバックマシン - NHK広島
原爆戦災誌 - 広島市
* ウィキメディア・コモンズには、不動院 (広島市)に関するカテゴリがあります。)

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