両唇放出音

両唇放出音の概要

両唇放出音（りょうしん ほうしゅつおん）は、音声学における子音のカテゴリの一つです。これは、口腔を下唇と上唇で閉じた状態から、声門を閉じたまま喉頭を上昇させ、声道内に気流を生じさせ、両唇を開放することで生じる音です。このプロセスにより、閉鎖音に似た破裂音が生成されます。両唇放出音は国際音声字母（IPA）で表記すると [pʼ] となります。

特徴

発声

両唇放出音は無声音であり、声帯の振動を伴わないため、音を出す際には声帯が関与しません。この特性は、無声に分類される他の子音と同様の特徴を持ちます。

調音

• - 調音位置: 両唇音式であり、下唇と上唇によって音が生成されます。
• - 調音方法: 発音時に喉頭を上昇させることで、声道内で気流が生じ、この気流が放出音として表れます。
• - 口蓋帆の位置: 口蓋帆が持ち上がり、鼻腔への通路が塞がれることで口音が生じます。

言語における両唇放出音

両唇放出音は、一般的に調音部位が奥に位置する場合が多く、放出音を用いる言語でもこの音が存在しない、もしくは頻繁には使われないことが多いです。具体的な言語の例としては、アムハラ語が挙げられます。この言語では、原則としてゲエズ語からの借用語にのみ両唇放出音が含まれています。さらに、ゲエズ語自体でも、ギリシャ語からの借用の際に無声無気音の「p（π）」を写すために用いられているという特徴があります。

言語例

• - アムハラ語: 例として「エチオピア」は「ኢትዮጵያ [itjopʼːja]」、総主教は「ጳጳስ [pʼappʼas]」と表現されます。
• - 他の言語: エチオピア・セム語群やオロモ語、ケチュア語、ウビフ語、さらにはグルジア語（表記: პ）などでも観察されます。

参考文献

この音声学の領域について理解を深めるためには、以下の文献も参考にされると良いでしょう。

• - Joseph H. Greenberg (1970). “Some Generalizations concerning Glottalic Consonants, Especially Implosives”. International Journal of American Linguistics 36 (2): 123-145.
• - Grover Hudson (1997). “Amharic and Argobba”. In Robert Hetzron. The Semitic Languages. Routledge. pp. 457-485.

このように、両唇放出音は、音声学における重要な要素として、特に特定の言語において観察されるユニークな音のカテゴリーを占めています。

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