両総用水

両総用水について

両総用水は、千葉県北東部の利根川沿岸地域の排水対策と、九十九里平野南部地域への農業用水の供給を主な目的とする用水路です。この用水路は「両総農業用水」とも呼ばれており、その歴史的価値と農業への貢献から、疏水百選にも選定されています。

概要

両総用水は、香取市佐原にある第1揚水機場から利根川の水を取り込みます。取水された水は、香取市伊地山で栗山川に放流され、栗山川を下った先の山武郡横芝光町寺方にある第2揚水機場で再び取水されます。その後、東金市や茂原市など、九十九里平野の南部地域へ農業用水が供給されます。

全取水量は毎秒14.47立方メートルに達し、約20,000ヘクタールという広大な受益面積を誇ります。この用水路は、北部幹線、栗山川部分、南部幹線という3つの主要な部分から構成されています。北部幹線は第1揚水機場から栗山川の源流までを結び、栗山川部分は第1と第2揚水機場を繋ぎ、南部幹線は第2揚水機場から九十九里平野南部へと水を運びます。

特筆すべき点として、北部幹線と栗山川部分が房総導水路と共有されていることが挙げられます。この効率的な設計は、後の愛知用水などの事業においても参考にされました。

歴史

九十九里平野は、かつて海岸線と並行に砂丘と低地が連なる地形でした。低地には縄文時代のラグーンが湖沼群として残っていましたが、明治時代以降の開発によりこれらの湖沼群は姿を消しました。その結果、大きな川がない南部地域では、良港に恵まれず漁業が衰退し、農業への転換が進みましたが、用水不足が深刻な問題となっていました。

一方、利根川東遷事業の影響で、香取市佐原一帯の大須賀川や小野川流域は排水不良地域となり、度重なる水害に苦しんでいました。このような状況下で、1933年（昭和8年）、1934年（昭和9年）、1940年（昭和15年）には大旱魃が発生し、九十九里平野中央部では、大正時代から山武郡東部連合耕地整理組合が用水事業に取り組んでいましたが、1943年（昭和18年）には、戦時中の食料増産計画の一環として、用水不足の解消と排水改良を同時に図る両総用水事業が計画・施工されることになりました。

1943年（昭和18年）には、国会の承認を得て農地開発営団に委任され工事が開始されましたが、第二次世界大戦の影響で一時中断されました。その後、1947年（昭和22年）に農林省の直轄事業として工事が再開されました。しかし、1950年（昭和25年）には香西村の用水幹線トンネル現場で落盤事故が発生し、6名の犠牲者が出ています。また、1954年（昭和29年）には南部幹線上流部の通水試験中に水路が決壊し、工事課長が濁流に呑まれ殉職するという悲劇も起こりました。これらの困難を乗り越え、1965年（昭和40年）に両総用水は竣工しました。

関連事項

横芝堰
利根川河口堰
昭和33年塩害

外部リンク

水土の礎 - 龍神を造った男たち
農林水産省 - 関東農政局 - 両総用水のあゆみ
千葉県ホームページ - 地域の農林水産振興 - 両総用水
* 両総土地改良区

両総用水は、その建設の歴史の中で多くの困難を乗り越え、今日では千葉県北東部の農業を支える重要なインフラとなっています。この用水路がもたらす恩恵は計り知れず、地域住民の生活と産業に深く根ざしています。

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