中原御殿

中原御殿

中原御殿は、江戸時代初期に相模国平塚（現在の神奈川県平塚市御殿二丁目）に存在した徳川将軍家の御殿（別荘）です。徳川家康の命により、江戸と駿府を行き来する際や鷹狩の際の宿泊施設として、1596年（文禄5年）に建てられました。しかし、慶長年間に設置されたとする説もあります。当時の記録では、「御旅館」と呼ばれていました。

歴史

中原御殿は、江戸幕府にとって重要な役割を担っていました。将軍が東海道を往来する際の休憩所として、また鷹狩りの際の宿舎として使用され、その重要性から「御鷹野御殿」「東照宮御旅館」「雲雀野御殿」とも呼ばれていました。正保国絵図や元禄国絵図にも「御殿」として記録されています。

神奈川県内には他にも、神奈川御殿（横浜市神奈川区）、小杉御殿（川崎市中原区）、藤沢御殿（藤沢市）といった将軍家の御殿が存在しました。中原御殿は、東西約140メートル、南北約100メートル、約7100坪の広大な敷地を有していました。周囲には幅約10メートルの堀がめぐらされていたとされ、現在の中原小学校の北側道路がその堀跡と伝えられています。

中原御殿は1640年（寛永17年）に一度修理されましたが、1657年（明暦3年）の明暦の大火後に取り壊されました。平塚市内にある善徳寺の茅葺きの三門は、この御殿の裏門であった冠木門を移築したものと伝えられています。

また、中原御殿の造営と同時期に、この地や平塚宿周辺には黒松を中心とした植林が行われました。その松林は合計127町歩にも及び、「中原御林」と呼ばれ、厳重に保護されていました。中原御林の松は、1796年（寛政8年）以降、江戸城西丸の普請や御台場の資材としても利用されましたが、明治時代に入ると、東海道本線の駅舎建築に使用する煉瓦を焼くための燃料として伐採され、失われてしまいました。

中原街道

中原街道は、中原御殿と江戸を結ぶ重要な街道であり、江戸時代以降の街道の名の由来となりました。中原街道沿いには、中原御殿の他に、小杉御殿や下川井御殿がありました。街道自体は後北条氏の時代から整備されており、もともとの起点は大磯宿外れの化粧坂でした。

交通アクセス

善徳寺三門へのアクセス

JR平塚駅より、神奈川中央交通バス（金目経由、秦野駅北口行き）に乗車し、南原土手で下車後、徒歩約15分です。

中原御殿跡碑へのアクセス

JR平塚駅7番のりばより、神奈川中央交通バス（平89,90系統、伊勢原団地経由伊勢原駅南口行き）に乗車し、中原御殿で下車後、徒歩約2分です。

脚注

注釈

中原御殿は、徳川将軍家の御殿として、江戸時代初期に重要な役割を果たしました。

出典

中島義一「徳川将軍家御殿の歴史地理的考察（第1報）ー南関東の場合ー(多田文男先生喜寿記念)」『駒澤地理』第14号、駒沢大学、1978年、ISSN 0454-241X、NAID 110007004125。
平塚市、平塚市博物館市史編さん係『通史編 古代・中世・近世』 9巻、平塚市〈平塚市史〉、1982年。 NCID BN00845543。

参考文献

成島司直 (撰)、長谷川雪堤 (挿絵)、平塚市博物館 (所蔵)「中原御宮記」、平塚市教育委員会、1843年、2019年1月17日閲覧。 紙本着色巻子仕立1点、幅29.5cm×長91.5cm (挿絵部分)。1996年 (平成6年) 1月20日指定、平塚市指定重要文化財。
大野誌編集委員会 編「第2章 うつりかわり /第1節 江戸時代までの大野」『大野誌』平塚市教育委員会、1958年。doi:10.11501/3002677。 「中原御殿と東照宮」「中原御林」の項目あり

関連項目

中原区
平塚市
中原街道
御殿・御茶屋
藤沢御殿
神奈川御殿
小杉御殿

外部リンク

善徳寺と中原御殿（平塚市観光協会）
中原御殿跡（平塚市博物館）

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