中国人排斥法

中国人排斥法についての詳細

概要

中国人排斥法（Chinese Exclusion Act）は、1882年5月6日にアメリカの大統領チェスター・A・アーサーによって署名された法律で、アメリカ全土で適用される連邦法として制定されました。この法律は、10年間にわたり中国からの移民や労働者の入国を禁止し、中国系アメリカ人の職業や移住の自由も厳しく制限する内容でした。中国語では「排華法案」と呼ばれ、日本語では「中国人移民制限法」や「中国人排除法」とも訳されています。

この法案は、アメリカの歴史において最も厳しい移民関連の法律のひとつとされており、「自由移民の理念に反するもの」とされていました。特に注目すべきは、政治家や宗教者、ビジネスマンといった特定の中国人が法の適用から除外された点です。このように、中国人排斥法は一民族に対する公式な差別の典型例として、20世紀における人種差別を象徴する存在となりました。

背景

1848年から1855年にかけてのカリフォルニア・ゴールドラッシュ時期、中国人移民は多くの苦しい労働に従事し、アメリカの経済に貢献していました。しかし、金が枯渇するにつれて白人移民とは対立し、その結果、中国人に対する敵意が醸成されていきました。1850年代には、財政赤字を解消するための税収を求められる中で、中国人労働者が役立つ存在とされていたものの、次第に排除の対象となっていく過程がありました。

1870年には南北戦争後の不景気の影響もあり、政治的に反中感情が高まりました。これにより中国人に対する差別的な税率や法案が提案され、最終的には中国人排斥法の成立へと繋がります。1882年の法律成立の際、中国からの移民流入を永続的かつ制度的に制限することは、明確に人種差別的な背景を持つものでした。

内容

中国人排斥法は、初めて特定の民族の労働者集団の入国を禁止した法律であり、特定の条件下では商人や留学生などの非労働者が除外されることもありました。この法律により、中国人は固定観念に基づく入国許可の要件を満たすことが困難となり、実際に米国に住む中国人に対しても厳しい影響が及びました。

例えば、合衆国を離れた中国人は再度の入国の際に移民資格証明書を求められ、この結果、多くの中国人は妻との再会や新しい家庭の形成を果たせなくなりました。その後、法律の改正によって条件はさらに厳格化され、帰国後の再入国も禁止されてしまいました。

この法はその後も1902年に恒久化され、どの中国人も居住資格証明書を取得する必要がありましたが、証明書がなければ国外追放されるという厳しい結果をもたらしました。具体的に言うと、1882年から1905年までの間に、約1万人の中国人が連邦裁判所によって移住を拒否される事態に至りました。

廃止と現在の状況

中国人排斥法は、1943年にマグヌソン法によってついに廃止されました。この時、中国は第二次世界大戦中で、アメリカと同盟国として協力関係にあったため、法律の改正が実現したのです。マグヌソン法により、中国人は帰化することが可能になり、同時に毎年105人の中国人移民が新たにアメリカに入国できるようになりました。

しかし、カリフォルニア州では1943年にも関わらず、中国人と白人との結婚を制限する法律が1948年まで残存していました。また、遅れて1967年まで他州でも似たような法律が存在していました。

今でも、合衆国法典の中には「中国人の排除」に関する項目が見受けられ、その影響は残る部分があります。これは、中国系住民やアジア系アメリカ人にとって、過去の歴史的な背景とその後の影響を振り返る上で、非常に重要な法的な側面です。

謝罪と反応

アメリカ合衆国下院は、2012年に中国人排斥法に対する公式な謝罪決議を全会一致で可決しました。この決議により、国としての原則である「すべての人は平等である」という理念に反する行為への反省が示されたのです。しかし、賠償に関しては支援しない方針が取られています。

中国人排斥法はアメリカ社会において残した影響の大きさから、今日においても議論の対象とされています。この法律が、中国人や中国系アメリカ人に差別的態度をもたらした歴史は、彼らのアイデンティティや文化、さらにアメリカの社会における立場に影響を与えています。

もう一度検索