中外 (雑誌)

中外：大正デモクラシー期の進歩的総合雑誌

1917年10月1日創刊、1921年廃刊の『中外』は、大正デモクラシー期を代表する総合雑誌として知られています。全22号という短い歴史ながら、その影響力は大きく、現代に至るまで研究対象となっています。

雑誌の創刊と背景

『中外』は、ジャーナリストの内藤民治によって創設された「中外社」から発行されました。内藤は、アメリカ合衆国で11年間特派員として活動し、『世界実観』を執筆するなど、国際的な視野を持つ人物でした。帰国後、彼が理想とした自由な言論空間を具現化するために、『中外』を創刊したのです。

同時期には、『改造』や『解放』といった進歩的な雑誌も創刊されましたが、『中外』はそれらに先駆けており、発行部数でもトップを誇る存在でした。

多様な執筆者と編集方針

『中外』の大きな特徴は、その執筆陣の多様性です。軍国主義者や国家社会主義者から、社会主義者、女性解放論者、さらにはアナキストまで、幅広い思想を持つ人々が寄稿しました。新劇女優の伊沢蘭奢が記者として活躍していた時期もありました。

具体的には、伊藤野枝、神近市子、長谷川時雨、三上於菟吉、後藤新平、堤清六、安成貞雄、山口孤剣、堺利彦、斎藤与里といった、当時著名な文化人や思想家が名を連ねています。彼らの多様な視点が、雑誌に独特の深みを与えていました。

編集方針としては、民主主義を貫き、自由な言論を保障することを重視していました。しかし、その姿勢は常に危険と隣り合わせであり、発禁処分を受けた号もあったといいます。

廃刊とその後

1921年、『中外』は廃刊となりました。その後、内藤は関東大震災後の1923年にソビエト連邦へ旅立ちました。

復刻版

『中外』の貴重な記録は、1988年に不二出版によって全巻復刻されました。これは、大正デモクラシー期の言論状況を知る上で貴重な資料となっています。全巻復刻版は、複数回に分けて販売され、高額でしたが、多くの研究者や愛書家に迎えられました。解説書も付され、内容の理解を深める助けとなっています。

まとめ

『中外』は、大正デモクラシー期の政治、社会、文化を多角的に映し出した重要な雑誌です。その多様な執筆陣、自由主義的な編集方針、そして短いながらも濃密な歴史は、現代社会においても多くの示唆を与えてくれます。復刻版によって、私たちは改めてその価値を認識し、過去の知恵を学ぶことができます。

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