中村歌右衛門 (6代目)

六代目 中村 歌右衛門

六代目中村歌右衛門（1917年 - 2001年）は、日本の伝統芸能、歌舞伎において輝かしい業績を残した役者であり、人間国宝に認定されています。屋号は成駒屋で、彼の芸は時代を超えて多くの人々に愛されています。本名は河村藤雄であり、幼少期から歌舞伎の世界に身を投じ、その才能を開花させました。

来歴・初舞台

歌右衛門は五代目中村歌右衛門の次男として誕生しましたが、幼少期に母方の家に養子に入ることになります。御曹司として何不自由のない環境で育ったものの、先天性の左足脱臼に苦しむこととなり、彼の舞台上での動きに影響を及ぼしました。しかし、1922年に東京新富座で三代目中村兒太郎を襲名し、初舞台を踏むと、その後の彼のキャリアは順調に進展していきます。

戦後の舞台と次代の重圧

しかし、1933年には兄である五代目中村福助が早世し、突如として大きな重圧が彼を襲います。父の意向もあり、歌舞伎界の中心的な存在として次代を担うことになった歌右衛門は、孤児同然の状態でこの役割を背負っていくこととなりました。この時期から彼は、多くの名作において主演を務め、戦後の女形の最高峰としての地位を確立していきました。

芸風・当たり役

歌右衛門の演技スタイルは多彩であり、彼は娘形から姫、傾城、世話女房まであらゆる女形の役を見事に演じ切りました。特に『京鹿子娘道成寺』の白拍子花子や『祇園祭礼信仰記』の雪姫などは彼の代表作とされています。その演技力は、ただ美しさだけでなく、役に対する深い理解と解釈を伴ったものでした。吉右衛門や大阪の三代目中村梅玉などとの共演から多くを学び、劇団での修業を経て名声を築きました。

受賞歴・国際的な影響

彼は1948年に文部大臣賞を受賞し、以降も多くの賞を受けるなど、芸術的な評価を受け続けました。特に1960年にはアメリカ本土公演を行うなど海外活動も活発化し、エリザベス女王の前でも公演を行うなど、歌舞伎の国際的な普及に貢献しました。1980年代に入ると、足の衰えが見られるも、数々の名舞台を勤め上げ、多くの後進を指導するなど、その影響力は衰えることがありませんでした。

プライベートな部分

歌右衛門の私生活においては、若い頃の駆け落ち事件が話題を呼びましたが、彼は非常に丁寧で穏やかな性格でも知られていました。また趣味はクマのぬいぐるみ収集や海外旅行で、人生を楽しむ様々なエピソードが残っています。彼の晩年まで、舞台の監修や後進の育成に尽力し、2001年に84歳でその生涯を閉じました。彼の業績は日本の伝統文化の一端を担うものであり、今なお多くの人々に愛され続けています。

もう一度検索