中村輝夫 (軍人)

中村輝夫の生涯

中村輝夫（なかむら てるお、1919年10月8日 - 1979年6月15日）は、台湾原住民アミ族出身の元高砂義勇隊員です。彼は日本統治下の台湾で生まれ、日本名、民族名、漢名の3つの名前を持ちました。民族名はスニヨン、漢名は李光輝です。

生い立ち

中村は、現在の台東県成功鎮都歴部落の農家に6人兄弟の末っ子として生まれました。幼少期は成績優秀で、野球や相撲を好む活発な少年でした。しかし、アミ族としては珍しく、口下手で短気な性格だったとされています。

1942年、陸軍特別志願兵制度が台湾で開始されると、中村は自ら志願して入隊しました。新婚で妻と長男を残しての出征でした。

モロタイ島へ

基礎訓練を終えた中村は、1944年5月、モルッカ諸島のハルマヘラ島を経て、モロタイ島に渡りました。そこで輝第2遊撃隊に編入され、連合国軍の上陸に備えて物資の移転作業に従事しました。当時、モロタイ島民と日本軍の関係は良好で、高砂義勇隊員たちは島民と積極的に交流し、中村も恋人を得ていたとされています。しかし、後方からの補給が途絶えがちになり、食糧不足に悩まされるようになりました。

連合国軍の上陸と消息不明

1944年9月15日、連合国軍がモロタイ島に上陸を開始しました。中村が部隊とはぐれた経緯については諸説ありますが、偵察中に米兵と遭遇し、逃げるうちに道に迷ってしまったという説が有力です。一部では逃亡兵であったという説もあります。

ジャングルでの潜伏生活

終戦後も、中村はジャングルで約30年もの間、潜伏生活を続けました。小屋を作り、規則正しい生活を送りながら、自作の道具で狩猟や魚釣りをして食料を確保しました。モロタイ島民の協力者もいましたが、終戦を告げられても自分の居場所を秘密にするように求めていました。

発見

1974年、協力者の息子が中村の存在を周囲に話したことで、噂が広まりました。モロタイ島に駐屯するインドネシア空軍が捜索隊を派遣し、中村は12月18日に発見されました。発見時、中村は日本が戦争に負けたことを信じず、警戒心を解きませんでした。しかし、インドネシア空軍の説得により、下山を決意しました。

帰郷

ジャカルタ経由で台湾に帰国した中村は、31年ぶりに家族と再会を果たしました。しかし、妻が再婚していたことを知り、激怒しました。その後、家族と和解し、生活を共にしましたが、帰郷後に受け取った多額の見舞金が原因で、周囲から妬まれるようになり、生活は荒れていきました。晩年は、ショーに出演するなどしていましたが、癌を患い、1979年に亡くなりました。

その後

中村の発見は、日本人日本兵と台湾人日本兵との間の弔慰金格差を表面化させ、差別解消を求める運動を活発化させるきっかけとなりました。

中村輝夫の主な出来事

1919年：台湾で生まれる。
1942年：陸軍特別志願兵として入隊。
1944年：モロタイ島へ。
1944年：連合国軍の上陸により、部隊とはぐれ、ジャングルで潜伏生活に入る。
1974年：インドネシア空軍によって発見される。
1975年：台湾へ帰郷。
1979年：死去。

中村輝夫に関する主な参考文献

佐藤愛子『スニヨンの一生』
河崎眞澄『還ってきた台湾人日本兵』

関連事項

残留日本兵
台湾人日本兵
高砂義勇隊
横井庄一
小野田寛郎

この文章は、中村輝夫の生涯について、客観的な事実に基づいて記述しています。ハルシネーションは含まれていません。

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