中村進治郎

中村進治郎

中村進治郎（1907年 - 1934年）は、昭和初期に活躍した挿絵デザイナー、編集者であり、モダン・ボーイとして知られています。彼の人生は、ムーランルージュ新宿座の歌手・高輪芳子との心中事件によって、その名を広く知られることとなりました。

生涯

中村進治郎は、神奈川県横浜市弥生町（現在の横浜市中区弥生町）で生まれました。吉田小学校を卒業後、逓信省横浜電信電話技師官駐在所に給仕として就職します。関東大震災後には、活動弁士見習いなどを経験し、その後、寄稿などをしていた蒲田花形社に入社しました。

1928年（昭和3年）には、博文館の『文藝倶楽部』に掲載された菊池幽芳の『狂人』や川端康成の『花園の犠牲』の挿絵を「中村進」名義で手掛けました。1929年（昭和4年）には、『新青年』でおしゃれ欄「わ゙にてい・ふえいあ」（翌年「ヴォガンヴォグ」と改名）を担当し、横浜貿易新報連載の清水孝祐（北林透馬の筆名）による小説『波斯猫』の挿絵も担当しました。その後も、片田江全雄の『虹の橋を渡りて』、国木田虎雄の『海港の人形』、福田正夫の『炎の華環』などの挿絵を手掛け、挿絵画家としての地位を確立していきます。

1930年（昭和5年）には、雑誌『蒲田』の編集を手伝うようになり、編集者としても活動を開始します。編集作業に携わる傍ら、『文學時代』などにも寄稿するなど、文筆家としても才能を発揮しました。

1932年（昭和7年）には、交際していたムーランルージュ新宿座の歌手・高輪芳子と、自宅である四谷の新宿園アパートで心中事件を起こし、中村のみが一命を取り留めました。この事件は世間を大きく騒がせ、中村は承諾殺人として起訴されることとなりました。数か月の未決監房生活を経て、懲役2年執行猶予3年の判決を受けました。出所後、再び売文業を再開し、心中事件をテーマにした小説を執筆したり、ムーランルージュで興行を行うなどしましたが、1934年（昭和9年）11月15日、東京府中野区のアパートで睡眠薬の過剰摂取により死去しました。享年27歳。自殺とされています。

人物

中村進治郎は、その短い生涯において、挿絵デザイナー、編集者、そして文筆家として多才な才能を発揮しました。昭和初期のモダンな文化を体現した人物として、彼の作品や生き方は、今もなお多くの人々に影響を与え続けています。

参考文献

神奈川文学振興会 編『永遠に「新青年」なるもの -ミステリー・ファッション・スポーツ- 創刊101年記念展』神奈川近代文学館、2021年3月20日
佐藤清彦『にっぽん心中考』青弓社、1998年11月30日
昭和ニュース事典編纂委員会、毎日コミュニケーションズ 編『昭和ニュース事典』 3巻、毎日コミュニケーションズ、1991年6月
山下武『「新青年」をめぐる作家たち』筑摩書房、1996年5月24日

もう一度検索