中津江村

大分県日田市中津江村：歴史と文化、カメルーンとの交流

中津江村（なかつえむら）は、大分県日田市に位置する地域です。かつては日田郡に属する村でしたが、2005年3月22日に日田市に編入合併し、行政地域としてはその名前を消しました。しかし、合併後も「大分県日田市中津江村」として、「村」の名称を残したまま地名が存続しています。これは、旧中津江村の坂本休村長の強い要望と、2002年日韓ワールドカップでの知名度向上が背景にありました。

地理

中津江村は、大分県の西部に位置し、周囲を山々に囲まれた地域です。津江山系県立自然公園内に位置し、渡神岳、猿駈山、三国山、尾ノ岳、酒呑童子山などの山々が連なっています。これらの山々が織りなす自然豊かな景観は、訪れる人々を魅了します。また、津江川や鯛生川といった河川、下筌ダムなどの湖沼も点在しています。

歴史

中津江村の歴史は古く、中世には長谷部信連の末裔を名乗る一族が土着し、この地を治めていました。彼らは長谷部、あるいは津江を称し、「津江殿」と呼ばれていました。居城は、現在の栃原の田ノ原にある伝来寺とその裏山にある「城山」にあったと伝えられています。南北朝時代の1338年には、長谷部信堆が肥後国の僧、大智禅師に館を寄進し、伝来寺を開かせました。

津江氏、長谷部氏のその後の盛衰は不明ですが、文禄・慶長の役の際には、津江新左衛門尉ら3名が大友吉統に従軍したという記録が残っています。大友氏が改易された後は、津江地域を含む日田郡は豊臣政権下の蔵入地となり、代官支配を経て毛利高政の知行となりました。毛利氏が佐伯へ移封された後は、ほとんどの期間が徳川幕府の直轄領となりました。

江戸時代中期には、日田地方でもスギの挿し木による栽培が盛んになり、中津江村丸蔵では1750年に1万本の挿し木が行われた記録が残っています。この頃から林業も盛んになっていったことが伺えます。

地名の由来

地名である「津江」は、古代、この地域一帯を指す名称でした。中津江村は、その津江の中央部に位置することから名付けられたと言われています。また、「津江」という名称は「潰える」に通じ、崩壊地やそうした地域の多い山地を意味しているという説もあります。

沿革

中津江村は、1875年3月に野田村と栃原村が合併して栃原村となり、梅野村と中西村が合併して合瀬村が成立したことに始まります。その後、1889年4月1日に町村制が施行され、栃原村と合瀬村が合併し、中津江村が誕生しました。1918年には鯛生金山の採掘が本格化し、地域経済を潤しました。1969年には下筌ダムが完成しましたが、1972年には鯛生金山が閉山しました。2002年5月24日には、サッカーワールドカップに出場するカメルーン代表が来村し、大きな話題となりました。

村政時代の行政

中津江村には、多くの村長がその責務を担ってきました。初代村長の川野仙蔵から、最後の村長となった坂本休まで、様々な方が村の発展に尽力しました。

交通

中津江村には鉄道は走っておらず、最寄り駅はJR久大本線の日田駅です。バスは、日田バスセンターから杖立線に乗車し、松原ダムバス停で下車後、日田市営バス中津江線・栃原線に乗り換える必要があります。道路は、国道387号、国道442号、竹原峠道路、県道9号線、県道12号線などが通っています。

名所・旧跡

中津江村には、鯛生金山、伝来寺庭園、宮園津江神社など、多くの名所・旧跡が存在します。特に宮園津江神社では、大分県指定の無形民俗文化財である『麦餅つき祭り』が毎年7月15日に行われています。

施設

津江温泉、鯛生家族旅行村、道の駅鯛生金山、鯛生スポーツセンターなど、多くの施設があります。特に鯛生スポーツセンターは、2002年サッカーワールドカップでカメルーン代表がキャンプ地とした場所です。

教育機関

中津江村には、日田市立津江小学校と日田市立津江中学校があります。津江小学校は、かつての中津江村立鯛生小学校、中津江村立丸蔵小学校、中津江村立川辺小学校を統合してできた学校で、後に上津江小学校との統合を経て現在に至ります。津江中学校も、鯛生中学校と中津江中学校が統合して誕生し、その後上津江中学校との統合を経て現在に至ります。現在は小学校と中学校が同じ校舎で小中一貫教育を行っています。

カメルーンとの交流

2002年の日韓ワールドカップで、中津江村がカメルーン代表のキャンプ地に選ばれたことがきっかけで、カメルーンとの交流が始まりました。カメルーン代表の来日は当初予定より大幅に遅れ、その騒動は日本中で注目されました。この出来事は、新語・流行語大賞にも選ばれました。その後も交流は続き、カメルーン駐日大使が来訪したり、当時の村長がカメルーンを訪問したりしました。2010年と2014年のワールドカップでは、旧村民がカメルーンを応援しました。また、元カメルーン代表のパトリック・エムボマも、引退後に中津江村でサッカー教室を開催しました。2021年の東京オリンピックでは、カメルーン選手団が日田市で事前キャンプを行い、中津江村も訪問しました。新型コロナウイルスの影響で直接の交流はできませんでしたが、住民は手作りの応援グッズを贈って選手たちを歓迎しました。

中津江村は、自然豊かな環境と、歴史と文化が息づく地域です。また、カメルーンとの交流は、地域の人々の心に深く刻まれています。

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